第34話
「お前は娼婦か冒険者になりなさい」
それは幼いジュリエッタにとって決定的な命令だった。
父が反逆者の汚名を着せられ処刑され、今まで何不自由なく暮らしていた領地は取られ、家族の大半も殺された。
ジュリエッタは大きな瞳に涙を溜め、まだ小さなマーゴットをしがみつくように抱いていた。
そんな彼女にその少女……ラストール家のエリザベトは嘲りを投げつけた。ただの嘲りではない、王の后となる彼女の言葉は命令だ。
従わないと殺されるか奴隷にされる。
だからジュリエッタは受け入れた。
……娼婦か冒険者。
どちらも一般には忌避される職だ。
ジュリエッタは冒険者を選んだ。運良く父に仕えていた騎士の一人から剣を習っていたから……否、体を売るなんてジュリエッタには出来なかった。
……それは最後の手段。
心に決めてジュリエッタは底辺の職業である冒険者となった。
実はボーダー領では彼女を担ぎ挙兵の動きもあった。父の反逆の容疑はあまりにも不条理な物だったから。
ジュリエッタは拒否した。
幼すぎる自分が戦なんて出来ないと分かっていたし、戦いは民を疲弊させ不幸にする。 だから黙って去った。
この国の平穏を乱してはならない。
……だけど……。
成長した彼女の手にボーダー家の紋章が彫られた指輪がある。
ボーダー家は常にこの国を敵から守ってきた武門の家系だ。
……もし、あの女と王がこのエルドリアを私物化し民をより不幸にしているなら……私は……。
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