第33話
『錬金術師バロード暗殺される』
この報は一気にエルドリア全土、諸外国にも駆けめぐった。
人々の反応は『悲嘆』。
皆、彼が本当に人を治していたのだとまだ信じている。
『犯人たる裏切り者の騎士カワナカ・リョウヘイを捕らえ、または殺害した者に王家は謝礼を払う用意あり』
続く二報に橙夜は落ち込んだ。
バロードを殺したのは橙夜だ。しかしそれが亮平の責任にされている。
ルセフとアーレントがそう説明したからだろう。
……これじゃあ僕が亮平を陥れたみたいだ。
砂を噛んでいるような嫌な感覚だ。だがジュリエッタは慰める。
「これでいいのよ、あいつは誰かが殺さなければならなかった……あんたは正しいことをしたのよ」
……正しい?
橙夜は懐疑的だ。
……人を殺めるのが正しいのだろうか?
「私もあれしかなかっと思うよ、橙夜君は悩むこと無いのよ」
澄香も同意してくれるが、彼は決意していた。
赤い髪のエルフ、エレクトラを探し、彼女だけでも元の世界に返そう。
……僕は人殺しの罪を背負った、でも澄香は違う。
当然、本人は知らない。蒲生澄香は本格的にこの世界に腰を落ち着けようと、ぼけスタイルに戻ったアイオーンやハーフリング兄妹から色々と教わっている。
場所はジュリエッタの小屋。今日もいい天気だ。
一見、何もかも元通りになった。
だが、ジュリエッタが最近思い悩んでいる。本人は隠しているつもりだろうが、折に入るとボーダー家の紋章の入った指輪をじっと見つめている。
そんな時、とても話しかけられない雰囲気になった。
足利橙夜はまだ知らない。彼等がこの先相手にする敵の大きさと闇の深さを。橙夜は夏の盛りの光の下、仲間達との生活に満足していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます