第19話 

 澄香ははっと口を押さえる。

「あいつはやってはいけない事をした、したんだ! 許せる範囲を超えている……だから僕は亮平を殺す……でも、そうしたら僕は人殺しだ、日本には帰れない」

「……なら、私もこの世界に残ります」

 澄香はよどみなく答えた。

「ダメだ! 君は……」

「この一件は私にも関係がある事です。あなただけに重荷を負わせないわ」

「でも」

「もう決めたこと」澄香は微笑む。

「だけどずっと一緒にいてね」

 橙夜は強く拳を握りしめた。涙が止まらない。

 彼は自分の甘さと弱さを己で嫌悪した。

 ……あの時、亮平を殺すべきだった。澄香は『優しさ』と言ってくれたけど、違う。あれは『弱さ』なんだ。その為にテオは、エヴリンは……。

「ジュリエッタ!」橙夜に呼ばれてはらはらと見守っていたジュリエッタがびくりとする。「頼む、僕に亮平を殺す技を教えてくれ」

「……いいの?」

「ああ」

「分かった……あんたにあいつの殺し方を教えるわ……でも勘違いしないでね! ……これはあんたの為だからね。トウヤの為だけだから。そして、あたしはあたしの為にバロードを殺すわ」

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