第3話

「がっはっは。そんな脅迫なんぞ、怖くはないわ」


 怪盗からの犯行予告を聞いても、おじいちゃんは、まったく意に介せずに笑い飛ばした。


「……でも、おじいちゃん。この製材所が盗まれちゃったら嫌だよ……」


 おじいちゃんはにやりと笑うと答えた。


「じゃあ、すみれが怪盗だったら、何を盗む?」


 おじいちゃんはすみれに質問をした。


「え?……えっと……木材置き場の木材?」

「はっはっは。あそこには何十もの監視カメラがインターネットで監視をしている。そりゃ1本2本は取られるかもしれないが大半は防げるさ」


 それを聞いて、大井が横から割り込んだ。


「フォークリフトだって取られちゃうかも」

「ふむふむ、なるほど。でも、あのフォークリフトは常にGPSで監視されているのでな。この工場から運び出された時点でメーカーがアラームを鳴らして警察へ通報する仕組みになっているんじゃ」


 なるほど……大井も納得して黙り込む。


「製材設備や工場が盗み出されるということは……」


 部長が恐る恐る質問するが、おじいちゃんはがははと笑い飛ばす。


「設備はどれも何10トンもの大きなものばかり。工場だって建物を持っていくこともできまい。結局、怪盗は何も持っていけないよ」


 これを聞いて、三人は少しはほっとしたものの、それでも何か釈然としなかった。


『怪盗オゾンカだって、そのくらいのことは最初から分かっているのでは?』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る