第2話
「……この挑戦状、どうしようか。やっぱ警察へ?」
大井は少し震えながら挑戦状をすみれに手渡した。
すみれは、挑戦状を読みながらしばらく黙っていたが、やがて小さな声で呟いた。
「まずは、おじいちゃんに報告して、相談してみようと思う」
「……そうね。警察はそれからでも遅くないか」
「よっしゃ、そうと決まれば早速行こう」
こうして3人はすみれの自宅からも近いおじいちゃんの製材所へ向かうために電車に乗った。
電車の中で……
「すみれ、そのおじいちゃんの製材所、どんなところか教えてくれる?」
すみれは、ロングシートにちょこんと座り、うつむきながら口を開いた。
「製材所は……私が子供のころから大好きな場所でした。工場では製材機で大きな木をどんどん加工していきます。原木や加工品を積み重ねた木材置き場。行きかうフォークリフト……」
普段内気で自分から話すことが少ないすみれが、心なしか活き活きと話し始めている。
「あぶないから、昼間はいつも事務所の窓から見ていただけだけど、夜になるとおじいちゃんが工場や木材置き場を案内してくれるの。そして、木材についてたくさん教えてくれるんです」
そう言った後、すみれはまた表情を暗くして声のトーンを下げた。
「……おじいいちゃんの製材所を怪盗に奪われちゃうなんて……悲しくて……」
うつむくすみれの頬から、ひとつ、ふたつ、涙がこぼれる。
電車がガタガタと走り続ける音だけが聞こえてくる。
……沈黙を破るように、大井が声を荒げた。
「何言ってんだ。おれたち、天王洲中学探偵部じゃんか。おじいちゃんの製材所、誰にも渡すもんか。おれたちが解決すればいいんだ」
大井の目がぎらぎらに燃えていた。
「そうだね。まずは、おじいちゃんと合流して、作戦を立てましょう。私たちならば、製材所を守れるわよ」
部長が、すみれの手に自分の手をそっと乗せる。
すみれは、二人の顔をみて、少しだけほっとした笑みを浮かべた。
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