第4話 自由人、初めてのお仕事
※注意。この話にはグロ表現があります。苦手な方はご注意ください。
受付さんに教えてもらった宿屋に行きました。
いやぁ、内装も奇麗だし出てくるご飯もそれなりにおいしかった。さすがに王城の料理に比べるとそこまでだったけど。
さて……とりあえず、宿も取って腹ごしらえもしたし、何をしようか。……ギルドでなんか依頼でも受けようかな? 魔法も実験もしたいし。
では早速、レッツゴー‼
*
ふむふむ、流石に始めのうちは城下町内での仕事や、採取依頼ばっかだなぁ。討伐依頼とか無いかなぁ。
……おっ、森に生息する魔物──ゴブリン五体の討伐依頼があった。如何にも駆け出しが受けそうな依頼だね‼ これを受けよう。
早速この依頼を受付に見せに行く。
「すみませーん。この依頼を受けたいんですけど」
「確認させていただきます。……ゴブリンの討伐依頼ですか? まさか一人で行く気ですか?」
「そのまさかです‼」
だってボクに冒険者の知り合いとか居ないし。というか、いたとしても一緒にはいかないと思う。
「……すみません、失礼を承知で言いますが、流石に三人以上のパーティーを組んでこの依頼に挑んだ方がよろしいかと」
「う~ん、知り合いに冒険者とか居ないんだよね」
「では、こちらの方で探しましょうか?」
「流石に、初対面の人たちといきなり組めって言われても……」
間違いなく、連携とかできないでしょ。それにパーティーとか気心知れや仲じゃないとギスるでしょ絶対。
「あなたは駆け出しの方でしょう? 言っておきますが、駆け出しの方は、自分の実力を過信しすぎる傾向があります。そして、その過信が死を招く。そのため、ギルドが責任をもってバックアップするのです」
結構きつめに注意された。
いやまぁ、確かに言い分はわかるよ? 冒険者の仕事はかなり危険なもので、駆け出しの冒険者はなぜか自信過剰のものが多い。そして、そういう者から死んでいくのも。
冒険者が死ぬことによって、依頼主にもギルドにも迷惑は掛かる。けど、ぶっちゃけていうと、死んだ奴からしたら、そんなもんどうでもいいでしょ。
まぁ、流石にボクみたいに割り切れる人は少ないから今こうなってるんだよね。さてどうするか。
「──討伐依頼を一人で受ける。面白い、私が許可しよう」
ボクが悩んでいると、腹の底から来るような重い声がギルド内に響いた。
「ギ、ギルド長⁉ よろしいのですか⁉」
「なに、構わんよ。冒険者とは危険を冒して未知へ挑戦する者。仮に彼女が、依頼で死んだとしてもそれは冒険の果てに起こった結果だ。そこに、他者の思惑が入り込む余地はない」
なんか出てきた。
見た目はかなりむさいおっさんだ。ギルド長……そう呼ばれてたから、このギルドのトップか。確かに、ただならぬ実力を感じる。
というか、いいセリフっぽくいってるけど、言ってることはかなり酷いと思う。ボク以外の人間が言われたら、たぶん愕然とする。
「というわけで、ユキネ君だったかな? 私が許可したのだから、自由にするといい。ただし、冒険中に君に不利益が起ころうともこちらは一切責任を負わないがね」
「……それ、ギルド長がいっていいもんなの?」
「べつに、私たちはあくまで許可を出しただけだ。パーティを組むか組まないかは、君の意志で決めることだ。そこに私たちの意思はない」
う〜わ、かなりの屁理屈だ。でもボク、そういう人間……かなり嫌いじゃないよ。というか、共に楽しいことをしたいまである。
「そいうことなら、ボクはボクで自由にさせてもらうよ」
さ〜て、ギルドのトップから許可が出たし、早速行くか。
それはそうと、何でギルドのトップが駆け出しのボクに関わってくるのかね? 多分勇者関係でなんかあるな。
ま、なんかあった時はその時対応すればいいや。
そして、ボクは意気揚々とギルドを出ていくのだった。
*
「……本当によかったのですか?」
目の前で起きたやり取りにヘルミナはアードレスに問いただす。
あの少女を一人で行かせたことについて。
「別に構わんだろう。皇帝からは様子見をしろと言われている。それに彼女の実力を測る機会でもある。本当に強い力を持つならこの程度の依頼は一人でこなすだろう」
「そうでしょうが……なにかあったらギルドの威信に関わります」
「確かにそうだな。……だが、そんな事態は起こらないだろう」
「どうしてそう言い切れるのですか?」
アードレスはその問いの答えを言葉にしなかった。
しかし、ヘルミナは彼が醸し出した雰囲気で察した。なにせ、自身も感じていたからだ。
あの少女と出会ったとき、気のせいだと思った。だが、今では確信している。
一線を退いたとはいえ、自分が一切実力を測ることができなかった──その事実を。
ヘルミナ自身がそうなのだ。なら、彼も感じたのだろう。その異様さを。
「……本当に、面白い事が起こりそうだな」
少女が出ていった入り口を見ながら、アードレスは呟くのだった。
*
なんか噂されてる気がする。……気のせいか。
あの後、宿に戻って準備をして速攻でゴブリンが出現するであろう森に直行した。
で、森の中に早速入って探索してるんだけど……見つからないなぁ。
「……大きな音とか立てたら寄ってくるかな?」
そういえば、魔法の練習もしに来たんだ。ならさっそく魔法を使って何かしよう‼
「──我が身を強化しろ──《ブースト・フィジカル》」
初級魔法に該当する身体強化魔法を掛ける。うーん、感覚的に結構身体が軽くなった気がする。
「とりあえず、何か殴ってみたら違いが判るかもしれない」
てなわけで、マジックポーチから冬君お手製の鉄の錫杖取り出します‼ 早速そこら辺の樹をぶん殴ってみよう‼
「ふんぬっ‼‼」
ボッゴーン‼‼‼‼‼‼
杖を振りぬいた瞬間、何の抵抗もなく木が抉れ、さらには衝撃波によって前方の木々が吹き飛ばされていく。……あの、やっちゃいました?
いやいやいや。いくらスキルと魔法で強化されてるからって、これはおかしいでしょ。
なにか? 魔力が多いせいでその分威力も倍増したのかな? それともこれがデフォ?
そんなこんなで、大きな音に釣られたのか複数の気配が森の奥から迫ってくる。これは……ゴブリンか。
そして遂に奴らは現れた‼‼ ……オークが。
いや、オメェじゃねーよ‼ なんでゴブリンじゃないんだよ‼ オークって最初に戦う魔物じゃないよ‼ しかも三体もいるよ‼ 馬鹿なの⁉
ボクが文句を垂れているのも構わず奴らはボクに襲い掛かろうとしている。仕方ねぇやるか‼
「──水の球よ、放たれよ──《ウォーターボール》‼」
とりあえず、水の初級魔法で牽制を仕掛けるが、残念、魔法は荒不方向へ飛んで行った‼
一番最初に接近してきたオークが手に持つ棍棒をボクめがけて振りぬく。
ボクはバックステップをし、避けると同時にすぐさまそいつの懐に潜りこんだ。
「死ね☆」
手に持った錫杖を思いっきり振りぬく。さっき掛けた身体強化魔法は切れていない。つまり、
グシャァァァ‼‼‼
錫杖が当たったところから衝撃が伝わり、オークの全身が肉片へと変貌する。
いやぁ、中々グロいっすねぇ。でも何かを壊したって感じがしてめちゃくちゃ興奮する。
今の一撃を観た他のオークはその場で呆然としている。オークが呆然とすることなんてあるんだ。
「何してるのかな? ボクはまだ全然楽しめてないんだ。そっちが動かないからこっちから行くよ」
そしてボクは思い切り地面を蹴り、一瞬でオークの目の前へと接近する。
目の前に突然現れたボクにオークは驚くが、直ぐに攻撃を繰り出さなかったボクを見て、防御の姿勢を取る。へぇ、最低限防御するだけの知能はあるんだ。でも、無駄だよ。
「──この世界において、ボクよりも優先されるものは存在しない」
先ほどよりも遅く、されど力を込めて錫杖を振りぬく。技術もへったくれもない身体能力にものを言わせた一撃。
それは防御を容易く貫き、オークの身体を容赦なく破壊する。
「あはっ。あははっ‼ あははははははははっ‼‼‼」
狂ったように笑い、その触感を楽しむ。
いい、いいよ。
皮を裂き、肉をズタズタにし、骨を粉砕する、この感触。
生きてるって実感できる。自由だって実感できる‼
親にも法にも縛られない、弱肉強食。
強者が勝ち、敗者が負けるそんな世界。
蟻を踏み潰すが如く、生き物を破壊する。
あぁ。ボクは自由だ‼
錫杖を振りぬくと同時に、身体強化魔法が切れる。
それを見計らってか、最後のオークは隙をつくかのように攻撃をしてきた。
ボクはその攻撃を、真っ向から受けた。
直撃する攻撃。されど、壊れたのはボクではなく奴の棍棒。
その光景を呆然としながら見つめるオークにボクは微笑む。
「じゃあ、さようなら」
地面を蹴り、握りこんだ拳を全力でオークの顔面に叩き込む。
その拳は顔面を貫通し、ボクの服を血が蹂躙する。
……そして、その場には静寂が訪れる。
この世界で初めての戦闘。流石に興奮しすぎたかな? でも、これが。これこそがボクの楽しみの一つ。
何かを壊すこと。そこには一種の快楽が生まれる。ボクはその快楽を味わいたくて生きているといっても過言ではない。
「さて、ストレス発散もできたし。今度は真面目にゴブリンを探すかな」
そうして、ボクは目的を達成すべく、歩き出すのだった。
あとがき
初めての戦闘シーン、いかがだったでしょうか?
個人的には、結構うまくできたと思います。
多分、ユキネの狂っている部分が最も出た話ではないでしょうか。
というか、狂ってすすぎて、愉悦主義者ではなくただの狂人じゃ……。
多分、この後の物語でもこういう場面が出てくると思います。
ですので、まえがきでも言いましたが、こういう表現が苦手な方はご注意ください。
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