第3話 自由人、再び異世界へ
再びやってきましたリトラス‼
どうも、現場のユキネです。現在ボクは、エルミナス帝国の城下町にいます。
あの後、転移した場所が、城下町の外れだったんだよね。で、流石に朝になってたから、多分今から王城に戻っても面倒くさいことになるだろうから、そのまま城下町を散策してます。
とはいっても、お金がなければ何も始まりません。なので、手持ちのものを売ってお金にしましょう。
という訳で早速、商会に来ました。
因みに商会とは、商人たちによって構成されている、商売をするためにある組織です。
まぁ、何処の異世界にもそれこそ地球にも基本的に存在しているだろうから、そこまで詳しく知る必要はないかな。
てなわけで、物を売りたいのですが。受付の人に話しかければいいんですかね? あ、こっちの受付は商人専用だからあっちに行けって? 了解であります‼
「ご利用ありがとうございます。こちら、ダウルス商会受付のイザベラです。本日はどのようなご用件ですか?」
「すみません。ちょっと物を買い取ってもらいたいんですけど、大丈夫ですか?」
「わかりました。買取させていただくお品物のご提示をお願いします」
というわけで、売るものを査定してもらってます。……そう言えば、ボクってこの世界のお金について、何にも知らないや。
素直に教えてって聞くのもいいけど。その場合、高確率で変な人を見る目をされそうだからなぁ。
なんで、王城にいた時に調べておかなかったのかって? 異世界に召喚されたことにワクワクしてて忘れてました‼
まあいい、後で調べとこ。
「お待たせしました。こちらが買取した商品の代金となります」
わーい、お金が手に入ったー‼
何々? 金色のコインが五枚、大小の銀のコイン一枚と四枚、大小の銅のコインが九枚と七枚でした。単価判らんので価値が判らんです。
「あ、もしかしてお金の単価が判らないんですか?」
「……何で分かるんですかね?」
「顔に出てましたから」
顔に出てるって……現実に表情から心を読む人っているんだ。
「よろしければ、そこの処の解説をしましょうか?」
「……宜しくお願いします」
ここはご厚意に預かりましょう
という訳で、受付さん──イザベラさんに色々教えてもらいました。
この世界の通過は下から銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、ミスリル貨で、基本的に大金貨以上の硬貨は商人や貴族が使うようなお金で、(独断と偏見で)日本のお金に換算すると大体以下の通りです。
銅貨=約十円
大銅貨=約百円
銀貨=約千円
大銀貨=約五千円
金貨=約一万円
大金貨=約五万円
白金貨=約十万円
ミスリル貨=約百万円
と言っても、世界によって金属の価値は変わるから、一概にこの値段とは言えないだろうから、大体この値段と思ってくれたらいいと思う。
で、今回ボクが得たお金は日本円換算で合計約59970円でした。結構あるなぁ。
とはいえ、何もせずに過ごしたら直ぐに無くなるだろうから、何か仕事を見つけないと。
「因みに、仕事でしたらこの国の冒険者ギルドに行くといいですよ。あそこは、冒険者以外の人にも出来る仕事を紹介していますから」
ナチュラルに心を読んでくるなぁこの人。
「……わかりました、ちょっと行ってみますね」
「では、またのお越しをお待ちしております」
イザベラさんはお辞儀をして見送ってくれた。……因みに、ニコニコとした笑顔がちょっと怖かったことは内緒です。
*
てなわけで、やってきました冒険者ギルド。
いやー如何にもテンプレって感じですね。異世界と言ったらやっぱり冒険者ギルドですよ。
早速入ってみましたが……今のところボクに突っかかってくる人は無し、チッ。
むしろなんか生暖かい目で見られてます。やんのかコラ。
「すみませーん」
とりあえず、受付の女の人に話しかけます。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「冒険者登録に来ました‼」
「冒険者登録…ですか?」
困惑する受付さん。なんかおかしなこと言ったかな?
「大変申し訳ございません。冒険者への登録は、原則十五歳以上の方となっておりまして」
「……ボク、十七歳なんですけど」
「えっ⁉」
いやえっ⁉ て。
確かにボクの身体は十七歳にしては小柄でスレンダーですけど、流石に十五歳未満って面と向かっていうのは失礼じゃないかな?
「……申し訳ありませんが、何か身分をご提示できるものはございませんか?」
「んー、これでいいかな?」
腕輪のステータスを受付さんにみせます。
「ブッ⁉ ……確かに十七歳ですね。お間違いして申し訳ありません」
「別にいいよ。とりあえず手続きの方はしてくれるの?」
「はい。では、こちらの用紙に必要事項の記入をお願いします」
羊皮紙を渡されました。え〜っと、名前、年齢、レベル、職業、スキル……パパっと記入するか。
カキカキカキ……終わりっと。
「書けました」
「では、ライセンスの方をお作りしますので、少々お待ちください」
そう言って、受付さんは奥の部屋へと入っていった。
*
コンコン
「失礼します」
相手の返答を待たずにドアを開ける。
「……失礼するなら、来ないでほしいのだがね。副ギルド長」
その部屋の主である男、このエルミナス帝国の冒険者ギルドのギルド長──アードレスは部屋ににゅうっ出した女性にそう告げる。
「馬鹿なことを言わないでください」
「そう不機嫌な顔をするな。美人な顔が台無しだぞ」
「不機嫌にさせているのはあなたです」
受付にいた女性──副ギルド長のヘルミナは、ギルド長の茶化す態度にため息をこぼす。
このギルド長、実力はあるがかなりの頻度でふざけた態度をとる為、基本的に彼女が諫めている。
そう、実力はある。それこそ、かつては伝説の冒険者の一人とまで謳われたほどである。
しかし、態度が問題であった。若かりし頃は公衆の面前で皇帝陛下に向かってため口で話しかけるほどに。
そして、冒険者時代に最も苦労していたメンバーが、ヘルミナである。
彼女がなぜ、未だに彼を見捨てないのか不思議である。
「それはそうと、今回はどんな要件だ? もしかして夜のお誘いか?」
「ギルド長、死んでください」
「辛辣だな」
「セクハラをする人には当たり前の態度です。とりあえず、要件はこれです」
そうして、ヘルミナはアードレスに先ほど冒険者登録に来た少女の手続きの用紙を渡す。
「っ!! ほう、まさか本当に皇帝の言う通りになるとはな」
「えぇ……まさか、異世界から召喚された勇者が皇帝の洗脳に打ち勝ち、勝手に行動するとは思いませんでした」
「偽物……ということはないのか?」
「それはないでしょう。その証拠に、彼女の腕には勇者に付けられるステータス・ブレスレットと称した洗脳の腕輪を填めていましたから」
「そうか……しかし、なおのこと理解できん。皇帝のスキルと腕輪の効果のダブルコンボは私でも防げないぞ」
そう、皇帝のスキルだけでもかなり強力だ。精神力が最強クラスの人間か、それこそ、皇帝のスキルを凌駕する力を持っていない限り防ぐことはできない。
だからこそ、二つの力を受けて平然としているあの少女が異常なのだ。
「だからこそ、その少女に対する対応を考えないといけません」
「冒険者のギルド長の立場から言うと、放置が無難だろう」
「ギルド長の立場から?」
嫌な予感がするヘルミナ。
「そして、私自身の考えだが……本格的にかかわった方が面白い事が起こりそうだ」
「……」
押し黙るヘルミナ。まぁ予想はできていた。何せこの男はそういう性格だからだ。
時に社会の利益よりも個人の楽しみを優先する、それがこの男の厄介な男だ。
「……問題が起きた場合、あなたが対処してくださいよ」
「流石にそこまで無責任なことはしないさ」
「そうですか。では、手続きの方は進めるということでいいですね」
「あぁ、宜しく頼む」
そうして、ヘルミナは退出する。
「……まさか、この年にもなって面白い事が起こるとはな。長生きはするもんだな」
残ったアードレスはひとり呟きながら、仕事を片づけるのだった。
*
「大変お待たせしました。こちらのカードがライセンスとなっております」
やっと手続きが終わったかぁ。結構長かったな。
受付さんが離れた後、何をやっていたかというと、冒険者の人に話を聞いてました。
最初は難癖でもつけられるかなと思ってたけど、そんなことはなかった。少し残念。
で、どんな話を聞いてたかって言うと、冒険者ギルドの制度について聞いてました。
まず、冒険者にはランクがあって、ランクは、鉄、銅、銀、金、白金、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイト、ファンタズムって感じらしいです。
基本的に大体の冒険者がたどり着けるのはオリハルコンまでで、アダマンタイト以上はそれこそ、魔王以上の力を持っていないと不可能らしい。
なので、オリハルコンにたどり着くと歴史に残る伝説の冒険者として語られるらしい。
と言っても、ランクに関してはそこまで拘らないからどうでもいいけど。
そんなこんなして、受付の人が戻ってきたため、今に至る。
「では、最後の手続きで、こちらのカードに血を垂らしてください」
血を垂らして登録する……テンプレだね。
受付さんのいう通り血を垂らします。なんか、指を切ったりするよりも、針で穴をあける方が痛いと感じるのはボクだけかな?
血を垂らすと、カードが一瞬輝き、カードの外周に鈍色の柄ができた。実際に見てみると、そこまで感動しないもんなのね。
「登録が完了しました。最後に、ライセンスを紛失した場合は銀貨四枚で再発行できます。それと、ギルドのルールを過度に違反した場合、ライセンスが剥奪されますのでご注意ください」
「了解しました‼」
というわけで、冒険者の登録完了‼
早速依頼受けよぉ‼ ……ていうのは嘘で、先に宿の方に行こう。そろそろ疲れてきたし。
「あの、この国でお勧めの宿屋はありますか」
「宿屋ですか? そうですね、ここを出て直ぐを左に曲がってそのまま直進すると、<埋もれ木の宿>というのがあります。そこが個人的にお勧めです」
「<埋もれ木の宿>ですか。ありがとうございます、早速行ってみますね」
そうして、受付さんにお礼を言ったあと、ボクは宿へと向かうのだった。
あとがき
どうして、こいつはやっておかなければいけないこと忘れるんですかねぇ。
それにしても、商会やこの世界の通貨、冒険者ギルド等の設定を考えるのは大変ですね。一応考えたのですが、これでも不完全な気がします。
正直に言って、主人公とヒロイン以外の八割の人物がモブの扱いになりそう。
やはり、僕に異世界系は早かったか……。
てなわけで、第三話ですが、奴がはっちゃけるのはまだ先ですので、その分頭のおかしい行動を取らせる気なので、期待しないで見ていてください。
では、またなりぃ~。
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