第4話 アリス(2)
03
時々益体もないことを考えながらも授業を受けていれば、放課後になる。
クラブ活動に向かう者や友人、恋人、婚約者と自由な時間を過ごす者と行動は様々だ。
クラブには所属せず、友人の一人もいない俺の場合はまっすぐ家に帰るだけ――だったのだが、今日の昼休みに持ってきた本を読み終え、とうとう我が家の蔵書すべてを読破してしまった。
入学前には読み終えるつもりだったのだが、入学前にいろいろとあって間に合わなかったのだ。
それでも入学してから1週間でとうとう最後の1冊を読み終えた。
一度見たものを忘れないなどという特殊能力地味た能力はないので、最初の方に読んだ本は内容もうろ覚えになっている。
ならば二周目というのも一つの手だが、この学園には大きな図書館があるらしい。
学生生活は3年しかないのだから、ここでしか読めないかもしれない本を読むべきだろう。
そう考えた俺は入学してから初めて学園の図書館に足を踏み入れた。
「広いな……」
家の蔵書も個人と考えればかなりのものだったが、さすがに貴族も通う国立の学園ともなれば比べるのが恥ずかしくなる。
建物自体がサッカースタジアムぐらい大きかったので期待していたが期待以上だ。
さて、何から手を付けるか……
自分で言うのもなんだが、本であれば好きも嫌いもなく何でも手を出す悪食なので、逆に迷ってしまう。
「しかし、人がいないな……」
せっかく広い図書館があるというのに利用者の姿は少ない。
ゲームでは、アリスのルートでこの世界には読書家が少ないという話も出ていたが、それにしても少ない。
一階の中央付近にたどり着くまでに誰かとすれ違うことすらなかった。
「あれ? アルマイヤーくん?」
宛もなく図書館を彷徨っていると不意に後ろから声をかけられた。
振り返ると数冊の本を両手で抱えたアリスが少しばかり驚いた様子でこちらを見ていた。
「カルヴァン……さん。どうした?」
「……ごめんなさい。委員でもないのに図書館にいたから」
「謝る必要はない。物珍しくて思わず声をかけたってことだろ?」
文学少女キャラなだけあってアリスは図書委員だったな。
朝に尻乗せ男が一緒に委員会だと言っていたので、仕事の途中なのだろう。
「その……ごめんなさい」
「だから、なんで謝る……別に気にしてないから謝るな」
俺の目つきが悪いおかげで、普通の表情を浮かべているのに向こうは怒らせてしまったと思って反射的に謝罪が出ているのだろう。
「ごめ……」
また謝りそうだったので少しばかり目に力を込めて牽制するとアリスは慌てて口をつぐんだ。
元々目つきが悪いのに力を込めたおかげでアリスは完全に怯え気味だ。
「その……と、図書館にはどうして?」
怖がらせるつもりはないので、軽く別れを告げてその場を離れようかと思ったら、予想外なことにアリスの方から話を振ってきてしまい足を止めるしかなかった。
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