ショーの片付けが終わる頃には、日も傾き始めていた。


すっかり遅くなってしまった。

ディミトリーはもう来ているだろうか。


 途中自販機で、お礼がわりにディミトリーの好きなコーヒーと、俺用にジュースを買って教室に向かう。走ると、ガシャガシャとメイク道具が賑やかに音を立てる。肩に食い込むカバンを背負い直して、オレは再び走って教室を目指した。


 部屋につくと、ディミトリーがもう教室で1人座っていた。初めて会った日もこんな夕方だったな、と思い出し懐かしくなる。


「あ、お疲れさま」


「わり、待ったか?」


「ううん、僕もさっき来たとこ」


 いつもの席に座り、ディミトリーにコーヒーを差し出す。ありがとう、と受け取るディミトリーに、さっきのお礼、とぶっきらぼうに言う。ディミトリーはクスクス笑って、美味しそうにコーヒーを一口飲んだ。俺もジュースの蓋を開けて、一口飲む。


「で、話って何?」


ディミトリーが緊張するのがわかった。普段おっとりしていて、何にも動じない彼には珍しい。


「あの、ね。驚かずに聞いて」


「う、うん」


思わず俺まで緊張して、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「僕は、マルクのこと、好き、なんだ」


「好きって……。え?」


 予想だにしていなかった言葉に頭が真っ白になる。

 ディミトリーは真剣な顔で続けた。


「あっ、でも、恋人同士になりたいとか、そんなんじゃないから。

ただ、今回一緒にやってきて、気持ちが大きくなって、友達としてはもういられないと思った。

次、一緒にできない本当の理由も、これなんだ。あのとき言えなくて、ごめん。

ショーの前にギクシャクするの嫌だったから、言い出せなかった……」


ディミトリーの顔を見ると、本当に悲しそうな顔をしている。


「こんな気持ちで、マルクとはいれない。

だから、今までありがとう。すごく楽しかった」

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