沢山の光の中を、ディミトリーのドレスを纏ったモデルが歩いていく。客席からは、ほぉ、と歓声があがった。

 ドレープが美しいドレスは、一足ごとにヒラリと揺れて、まるで風になびく優雅な花のようだ。


やべー。


気がつくと、涙が出ていた。


「マルク、泣いてるの?」


 となりで驚いてるディミトリーに「綺麗すぎて、なんか、涙出た」と言うと、笑って指でオレの涙を拭ってくれた。それが、恋人にするみたいに優しくて、なぜかドキリとしてしまう。


「頑張ったかい、あったね」


「おう」


舞台袖で見守って、帰ってきたモデルを激励してから控え室へ戻る。




「だあぁー!!

終わったぁぁー」


「お疲れ様、マルク。マルクにお客さんが来てるみたいだよ」


 ディミトリーが、控え室の入り口の方を指す。振り返ると、入り口の前に父と母が立っていた。


「えっ!?父さん、母さん!?」


ビックリしすぎて、思わず椅子から転げ落ちそうになる。


「話しといでよ」


ディミトリーが笑顔で背中を押す。


「お、おう。」


訳がわからず、とりあえず入り口に向かう。


「マイク、凄かったわ。

毎日、遅くまで練習してたものね」


母さんが、一番に口を開く。


「ちゃんと、頑張ってるんだな。

ま、その調子で頑張りなさい。」


父さんは、コホン、と咳払いしてすぐに目を逸らす。


「もう。お父さんたら。

俺の息子はすごい、一番うまい、って会場では、ずっと興奮してたのよ。

もう、素直じゃないんだから」


「え……?」


父の顔を見ると、横を向いた顔が、真っ赤になっていた。


「ごめんなさいね。私たち仕事ですぐ行かなきゃいけないのよ。

また、頑張ったお祝い、改めてしましょうね」


 父さんが、一度だけ俺の肩をポンっと叩くと、すぐにそっぽを向いて歩き出す。母さんもにこりと笑うと、その後に続く。


「……っ、父さん母さん、来てくれてありがとう!!」


その後ろ姿に大声で叫ぶと、母さんが振り返り、笑顔を見せてくれた。

 俺はしばらくその後ろ姿を、ぼーっと眺めていた。


「よかったね。マルク」


ポン、と肩を叩かれて、はっと我にかえる。


「てか、ディミトリー、なんで俺の親知って……」


そこまで言ってピンとくる。こいつがショーのこと、2人に知らせてくれたんだ。


「さぁ、何でかな」とごまかすディミドリーに、「ありがとう」と素直にお礼を言うと、ディミトリーは嬉しそうに微笑んだ。

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