⑦
沢山の光の中を、ディミトリーのドレスを纏ったモデルが歩いていく。客席からは、ほぉ、と歓声があがった。
ドレープが美しいドレスは、一足ごとにヒラリと揺れて、まるで風になびく優雅な花のようだ。
やべー。
気がつくと、涙が出ていた。
「マルク、泣いてるの?」
となりで驚いてるディミトリーに「綺麗すぎて、なんか、涙出た」と言うと、笑って指でオレの涙を拭ってくれた。それが、恋人にするみたいに優しくて、なぜかドキリとしてしまう。
「頑張ったかい、あったね」
「おう」
舞台袖で見守って、帰ってきたモデルを激励してから控え室へ戻る。
「だあぁー!!
終わったぁぁー」
「お疲れ様、マルク。マルクにお客さんが来てるみたいだよ」
ディミトリーが、控え室の入り口の方を指す。振り返ると、入り口の前に父と母が立っていた。
「えっ!?父さん、母さん!?」
ビックリしすぎて、思わず椅子から転げ落ちそうになる。
「話しといでよ」
ディミトリーが笑顔で背中を押す。
「お、おう。」
訳がわからず、とりあえず入り口に向かう。
「マイク、凄かったわ。
毎日、遅くまで練習してたものね」
母さんが、一番に口を開く。
「ちゃんと、頑張ってるんだな。
ま、その調子で頑張りなさい。」
父さんは、コホン、と咳払いしてすぐに目を逸らす。
「もう。お父さんたら。
俺の息子はすごい、一番うまい、って会場では、ずっと興奮してたのよ。
もう、素直じゃないんだから」
「え……?」
父の顔を見ると、横を向いた顔が、真っ赤になっていた。
「ごめんなさいね。私たち仕事ですぐ行かなきゃいけないのよ。
また、頑張ったお祝い、改めてしましょうね」
父さんが、一度だけ俺の肩をポンっと叩くと、すぐにそっぽを向いて歩き出す。母さんもにこりと笑うと、その後に続く。
「……っ、父さん母さん、来てくれてありがとう!!」
その後ろ姿に大声で叫ぶと、母さんが振り返り、笑顔を見せてくれた。
俺はしばらくその後ろ姿を、ぼーっと眺めていた。
「よかったね。マルク」
ポン、と肩を叩かれて、はっと我にかえる。
「てか、ディミトリー、なんで俺の親知って……」
そこまで言ってピンとくる。こいつがショーのこと、2人に知らせてくれたんだ。
「さぁ、何でかな」とごまかすディミドリーに、「ありがとう」と素直にお礼を言うと、ディミトリーは嬉しそうに微笑んだ。
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