あっと言う間に日は過ぎて、本番当日の朝。

 学校にいつもより早く来て、ショーの行われる体育館へと急ぐ。準備は万端にしてきた。

 ディミトリーはドレスを、約束通りオレの休校中に仕上げ、残りの1週間は、モデルを交えてのリハーサルなどが行われた。

 楽しかった。今日で最後かと思うと、少し寂しい気がした。もっとやってたかった。ディミトリーと一緒に無言で作業するのも、休憩しながらくだらないことをしゃべるのも、真剣に言い合うのも、全部、全部楽しかった。

 目頭が熱くなって、慌てて目を擦る。まだ、終わってない。

本番は絶対に失敗できない。

絶対に、成功させてやる。

 思い切り走って、待ち合わせ場所の控え室へ全速力で向かう。


 部屋に入ると、ディミトリーがもう来ていた。


「はよ」


「おはよう。走ってきたの?」


 息切れしてるオレに、ディミトリーが笑って水を差し出してくれる。


「サンキュ」


ゴクゴクと一気に飲むと、胸がスッキリとした。

 今日の出番は3番目。モデルが到着したら、余裕を持ってメイクが始められるからありがたい。

 早速メイク道具を出し、コテなどのヘアメイクの準備を始める。


「マイク」


椅子に座ってケータイをいじっていたディミトリーにふいに呼ばれる。


「ん?何?」


「今日はよろしくね」


改まって言われて、少し照れてしまう。


「おう、よろしく」


作業をやめて顔を上げると、ディミトリーの顔がすごく真剣で、なんとなく体ごとディミトリーに向き直る。


「どした?」


「今日終わったらさ、時間、あるかな?」


「おう。別に何もないけど……」


ショーの打ち上げは、明日早朝からバイト先の美容院の研修があるから、断った。


「ちょっと、話したいことがあって。いいかな?」


寂しい顔の訳を、話してくれるのかもしれない。直感でそう思った。


「おう。じゃ、いつもの部屋でい?」


いつもの部屋とは、いつも作業してた教室のことだ。


「うん」


「じゃ、片付け終わったらいつもな部屋集合な」


 ディミトリーがうなずいたそのとき、ガヤガヤとモデルたちが一斉に部屋に入ってきた。

 やっと、本格的に準備ができる。


「よし、やるぞ!」


「うん!」


2人で顔を見合わせて、俺たちはどちらからともなくハイタッチをした。

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