【55】狼藉は、この私が許さないっ!
ぐおおおおぉぉぉああああっ!!
「わあああっ!?」
こちらが身構える前に襲いかかってきたゴブリン(大)に、悲鳴を上げて逃げ出した。
すぐにうかつさに気づく。
部屋の外に出て扉ごと封印すれば良かったのに、わざわざ部屋の隅に走ってしまったのだ。
唾を飲み込む。
目の前の敵を見る。
体長2メートルくらい。痩せているものの大剣を片手で操る力は本物。剣の力か、それともゴブリン(大)の能力か、全身に炎をまとっている。
ヤバい匂いがプンプンする。っていうか熱っ! 火の粉が来る! 髪が焼ける!
「――なんてことが考えられるくらいには、修羅場に慣れてきたきたってことかな。私も。ははっ……」
さてどうする。
この至近距離で、しかも一対一の状況では、のんきに踊りを踊っている余裕はなさそうだ。
私は近くに落ちていた棒を拾い、構えた。切れ味良さそうな――っていうか、見た目からして『主人公の準最強装備』的なオーラを放つ格好いい大剣に対して、まったく心許ないが……ないよりマシ。
あとは私の、カナディア様から受け継いだこの身の力を信じるしかない。
思い出そう。
稲を踏みつけたイノシシに対してかました遠隔スープレックス。
アムルちゃんに不貞を働こうとしたアルマジロもどきに対してかました魔力入りの張り手。
レギエーラを襲った炎の巨人に対して放った浄化の魔法。
――正直、最後以外は思い出したくない光景だったが、それでも敵を打ち倒したのは本当なのだ。私の身体には力がある。
だから。
今度だって。
「ここはカナディア様のための城。そして今は、私の城で、私の空間」
木の棒を杖のように構え、魔力を放出する。
イノシシを撃退したときのように、動きを止めて、そして制圧する――!
「狼藉は、この私が許さないっ!!」
棒から放たれた魔力がゴブリン(大)を絡め取る――前に。
頭上から突如飛来したデカい何かが魔物を圧殺した。
轟音。砂埃。
消え去る炎と熱。消え去ったゴブリン(大)の声。
――は?
ややあって砂埃が晴れると、ゴブリン(大)が立っていたところに巨大な岩が鎮座していた。
しゅーっていってる。
何かところどころ紫色に光ってる。この岩。
上を見る。
天井には大きな穴が空いていて、パラパラと小石が落ちていた。
――は?
私は手元を見た。
ふっつーの木の棒に見えるそれを、確かめるように、振る。
轟音。砂埃。
岩がもう一個積み上がりました。
「――は!!?」
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