【52】まさか、コレは


「待って。歴代勇者の剣? 隕石を落とす杖? 黄金を生み出す、ツボ!?」

「最後だけ食いつきが違いますね」


 言わないでください。


「お気づきになりませんでしたか? あっちこっちの小部屋に、伝説級の代物がゴロゴロ転がってましたよ。ま、あくまで人間基準ですが」

「で、でも魔物もいるんでしょ!? もし万が一、伝説級の武器を魔物が持っちゃったら……」

「あー」

「危機感!」

「きっと問題ないとされたんでしょうね。武器や道具に頼るような魔物は大したことないと」

「その根拠は!?」

「いや、だって相手は神ですし」


 おのれ神様。


 私はため息をついた。


「やっぱり、地上への影響を考えたら放置はできないよ……。少しずつでも収蔵品の中身を確認して、最低限、魔物が入ってこないようにしなきゃ」

「わかりました。賢明なご判断だと思います」


 うとうとし始めたヒビキを胸に抱く。


「この子もそろそろ限界みたいだし。とりあえず、すぐそこの小部屋を確認したら、今日は引き上げよっか」


 目に付いた小部屋の扉を開ける。

 そこは、これまでに見た部屋と比べると小綺麗に整っていた。


 ――というか、むしろファンシーが過ぎた。


 部屋全体が、ピンクや花柄の布や雑貨で彩られていたのだ。


「なにこれ」

「さあ。どこかのピンクな勇者の部屋でも引っ張ってきたんでしょうかね」

「コメントが適当すぎない?」


 部屋の中を見回す。

 いちおう、雑貨のひとつひとつから魔力を感じる。可愛い魔導具をここに集めたと言えなくもない。


「いかがです主様。この部屋を専用の休憩室にしてみては」

「嫌だよ。むしろ正気が削られるよ」


 ――危険なもの、強すぎる魔力を発するものはなさそうだ。

 とりあえず入り口だけ封印しておくかと思ったとき、部屋の隅にピンク色の大きなクッションを見つけた。


「柔らかそうですね」


 ディル君がクッションを触る。ぼふぼふ、と、確かにとても柔らかそうだ。


「…………ぐぅ」

「ディル君!?」

「……おや。これはすみません。つい眠ってしまいました」


 つい、と言うには寝付きが超速すぎる。

 神獣を即落ちさせる。まさか、コレは……。


「人をダメにする伝説のクッショ――すやぁ」

「……ぐぅ」

「……くひゅぅ……」

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