【13】添い寝します


 しかし、田植えを舐めてはいけないのだ。

 ディル君が耕してくれた田んぼは、それなりの広さがあった。ふたりで手分けして苗を植え終わる頃には、辺りはすっかり日が暮れていた。


「主様? どうなさったので?」

「……まったく疲れていない、だと……?」

「それはそうですよ。主様の肉体、カナディア様は厳しい試練を乗り越えてきたお方ですから。加えて、魔力をうまく循環させて自然回復の技術も身につけていたそうで。今もちゃんと効果があるんですね」

「やばいな聖女」


 あの朗らかで女神そのものの微笑みからは想像できないが……これでますます、おバカな暮らしはできなくなった。

 これだけ苦労して作り上げた身体。きっとお城もそうだろう。

 カナディア様に胸を張れるように生きていこうと思う。お身体、ちゃんと受け継いでいますよと。


 お米作りは明日以降に持ち越すとして、私はディル君と夕食を摂った。


「これ、すごくおいしいです!」

「そう? よかった。たくさん作ったから、どんどん食べて。お米はまだないけどね」

「ありがとうございます! あ、でも俺、神獣なんで無限に食えますけどいいですか?」

「そういうことは早く言いなさい」


 冷や汗を浮かべた私に、ディル君はカラカラと笑って「冗談ですよ」と応えた。まったく。


「でも神獣なのは本当ですからね?」

「はいはい」


 イケメンと談笑しながらご飯――生前の私には想像できなかった時間だ。

 ま、どちらかというとやんちゃカワイイ弟が泊まりに来た感じだけど。これはこれで。


 さて、片付けをしたらシャワーでも浴びて……シャワーってあるのかな? まあ、これも魔法で何とか――。


「……あれ?」


 くらりとする。

 倒れかけた私をディル君が抱き留めた。


「まだ身体が慣れてないんですね。今日はもう休みましょう」

「……そうね。シャワーは明日の朝にしよっかな」

「添い寝します」

「待て」


 待てと言うのに聞きゃしないこのわんこ。


 結局私は、最初に目覚めた部屋でディル君と一緒に眠ることになった。

 大きなわんこ形態になったディル君に包まれ、私は久しぶりの安らぎを覚えた。

 モフぅ……最高……。


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