【7】女神様が白ご飯食べるの?


 ――ということで、着いたわよ。キッチン!


 でも。


「……なにこれ」

「キッチンです」

「うん、聞いた」


 そうじゃなくてね。

 キッチン……というより、歴史の教科書に出てきそうな炊事場の雰囲気。石造りで、アンティーク感満載。広さも十分。それはいい。多いに、よき。

 問題はね。


「なにもないじゃん! 調理器具とか! 食材とか!」

「ですね!」

「いやそこはフォローしてよ!」


 私の心からの叫びを、ディル君はニコニコ笑って流した。この子、さっきからずっと楽しそうだ。

 これは、あれだ。久しぶりにお外で散歩できるわんこだ。間違いない。


「先代のカナディア様は、このお城に到着されてすぐに、神への祈りを始めたんです。なので、実際ここで暮らしてた期間はほとんどなくて」

「ああ……なるほど。そういうこと……」

「俺、カナディア様の炊いた白ご飯、食べてみたかったです」

「女神様が白ご飯食べるの?」


 白米は私も大好きだが。ていうか、あるのねこの世界に。白米。


 でも、そうか。カナディア様は最期のそのときまで職務を全うしようとしたのね……。

 ならせめて、私が美味しいもの作って、私がこの身体で食べれば、カナディア様を労うことになるかな……。

 あれ? なんか変? まあいいか。


 さて、問題はどうやって食材を――というか、料理できる状況にもっていくか、なんだけど……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る