【声劇台本】Nameless Color ー望む赤子ー

水縹❀理緒

第1話ー望む赤子

声劇台本【Nameless Color -望む赤子-】

作者:水縹❀理緒

約15〜20分台本


※利用規約はプロフィールの方に記載してあります



店長:コト。店長。基本的に我が道を進むタイプ。画家。


店員:セイエン。マッサージやアロマの資格を持ち、店長の補佐をしている。優しい人。


お客様:本日のお客様。佐藤ユキナ。学生


〜配役表〜

店長ー不問

店員ー男性

お客様ー女性


ーーーー本編↓


店員:M「赤、青、緑に黒や白。世界は色彩のパレット。人は絵の具。様々な色が溢れかえれば、きっと、何かに染まってしまうことでしょう。」


店長:M「そんな疲れは、そんな汚れは、落としてしまいなさいな。さ、ここは癒しの場。不思議な不思議な、名も無きお店」



店員:店長。店長ー。また壁に落書きしましたね?俺の自室真っ黄色なんですが


店長:(鼻歌)♬︎♡


店員:店長ー。聞いてます?


店長:ん?おや。居たのか


店員:居ますよ。開店前ですから


店長:ご苦労、ご苦労!それでは私も着替えようかな。こんな黒色になってしまったエプロンでは、店のコンセプトに背いてしまう。ん?ベージュの新しい物は何処にやったかな?


店員:はぁ…こちらの方に置いておきますよ


店長:あぁ!ありがとう!セイエンは本当に良い奥さんになれるよ


店員:ありがとうございます。なれませんけどね


店長:そう?主夫というものがあるではないか


店員:そもそもの問題ですよ


店長:…ふむ。なるほど?


お客様:すみません…誰かいますか?


店長:おや


店員:お客様がいらっしゃったようですね。




お客様:凄い…部屋丸ごと棚だ…。色の粉が入った瓶が並べられてるのね。絵の具屋さんなのかな。でも看板なかったし……メニュー表だ。マッサージ…?


店員:いらっしゃいませ


お客様:あ、ど、どうも……。友達からオススメされてここに来たんですが…素敵なお店ですね。何屋さんですか?


店員:ありがとうございます。当店は画材や絵画の販売から、アロマ等の癒しを提供する、少し変わったお店となっております


お客様:幅広くされてるんですね…凄い…


店長:そう!


お客様:ひぇっ!!


店長:当店は幅広くお客様を癒す場所になっております!


お客様:………び、びっくりした


店員:はぁ……店長。もっと静かに出てきてください


店長:できる限り抑えたつもりだったんだけれど…失礼。店長の、コトだ。よろしく。こっちは助手のセイエン


店員:ただの店員です


お客様:…そ、そうですか…


店長:お客人は?


お客様:私は……佐藤ユキナといいます。美術部に所属していて…画材が無くなったので買いに…


店長:ふむ。なるほど。セイエン、お茶をお出しして。ついでに私の紅茶もよろしく頼むよ


お客様:そんな、お構いなく…


店長:ん?これはただのサービスだ。気にするでない


お客様:……じゃあ、お言葉に甘えて


店員:ユキナさんは何にしましょうか?緑茶、アールグレイ、チョコレートミルク、オレンジ。色々ありますよ


お客様:えっと……ちょ、チョコレートミルク、で。


店員:かしこまりました


店長:さてさて。画材といったかな?何が欲しいんだい?ここに無いものは有り得ない!って程に取り揃えているよ。気軽に言っておくれ


お客様:……え、と…水彩をしていて、その絵の具…を


店長:水彩画!いいねぇ素敵だ。何色が足りないんだい?


お客様:赤、です


店長:赤…ふむ。水彩は君の後ろの棚だな。好きな色の瓶を選びたまえ。


お客様:え、あ…はい。……どれがいいだろう…


店長:水彩画かぁ…最近は油絵ばかり描いているからなぁ。私も明るい色をよく使うけれど、君は赤が好きなのかい?頭の髪飾りも赤色だけれど


お客様:そうですね……赤は大好きです


店長:赤にも種類はあるけれど、どの色味が?


お客様:色味……ですか…?えっと……えっと


店長:例えば…そうだね。代表的なのは、絵の具によく使われるザ・赤って感じのカーマイン、印刷の三原色に含まれるピンクよりのマゼンタ、今君が手に取っている物は落ち着きのある朱色(しゅいろ)…ふむ。君の頭の髪飾りはカーマインよりだね


お客様:なら、カーマインが好きです。ハッキリとした…赤色。この朱色も好きですけど…


店長:ほう。どうしてだい?


お客様:どうして?


店長:赤が好きな理由。あるのかな?私は明るい色を見ていると元気になるから好きだね


お客様:どう、して…ですか。どうしてだろう…分からないんですけど、惹かれるんです


店長:ふむ。


お客様:私には、似合わない色だと思うんですけど……


店長:そうかな?


お客様:友達と一緒に美術部に入ったんです。その子から…この前、画材を見に行った時に、やっぱり青色の方が似合ってるよって言われちゃって…


店長:なるほど。お友達さんは、ハッキリ物を言うタイプなんだねぇ


お客様:きっと…私の為を思ってくれてるんだと…思います。私、1人だと何も出来ないし…親からも青色のものをプレゼントされる事も多くて


店長:……そう、か。


店員:お待たせ致しました。チョコレートミルクです。


お客様:あ、ありがとうございます!…凄いいい匂い…


店長:セイエンの作る飲み物は格別だぞ。きっと君も気に入る


店員:店長はアールグレイに角砂糖1つ


店長:おぉ!流石、我が助手。分かってるね


店員:店員です。


お客様:…


店員:…ユキナさん?どうされましたか?


お客様:あ…少し考え事を…


店員:考え事、ですか


お客様:私、どうして赤が好きなのかな…って。小さい頃からずっと赤が好きだった訳じゃないんです。元々、皆のいうように青が好きでしたし…


店員:そうだったんですね


お客様:でも…店長さんが仰ったように、私も明るい色を見ていると元気になれます。だから…ですかね?惹かれちゃうのは。友達が明るい色を筆に纏ってキャンパスに向かうその姿が…凄く輝いていて。赤色がベースの女の子のイラストを見た時に、好きだなって思ったんです


店員:俺も見てみたいです。ユキナさんがそこまで惹かれたイラスト


お客様:…赤が好きな理由…か


店長:赤は情熱の色


お客様:え?


店長:赤が好きな人は、活動的で正義感が強く外交的だ。


お客様:……そうなんですね。やっぱり私…


店長:しかし、君からは、赤の魅力を何も感じない


お客様:っ……。


店長:情熱なタイプではないだろう?


店員:店長…


お客様:……確かに私は情熱的でも明るくもないし…


店長:ふむ


お客様:じゃあ…青色は…?青色はどういう意味が


店長:青色が似合う、というのもよく分かる。青は落ち着きを持つ色だ。冷静、大人しい、爽やか…まぁ君に当てはめるなら大人しい、だな。赤と正反対だ


お客様:……そうですね


店長:つまり、だ。


お客様:やっぱり…私なんて……


店長:君は赤に憧れている


お客様:……え


店長:君のように優しげで行動的でない人でも、赤が好きな人はいる。そういう人は、赤に憧れている事があるのだよ


お客様:……憧れている…


店長:1人で行動出来ない君が、1人でこのお店へやって来た。赤のように、行動的になろうと頑張っているのかもしれない。素晴らしい事じゃないか。


お客様:…そう、ですか?でも……


店員:ユキナさん。顔をあげてください。


お客様:セイエンさん…


店員:アナタがチョコレートミルクを手に取った時、綻んだそのお顔。とても優しくて私は好きです。俯いているなんて勿体ないですよ


お客様:そ、そんな顔してましたか?


店員:えぇ。


店長:口説くなら外でやってくれたまえよ


店員:口説いてません。


店員:ユキナさんは色がもたらす影響をご存知ですか?


お客様:影響ですか…それは、元気になれる…とか?


店員:そうです。色には心理効果があって、感情や感覚、判断、生体に影響を与えるんです。暖色を見ると、暖かい。寒色を見ると冷たいイメージを持ちやすいですよね?


お客様:はい…たしかに。


店員:それに伴い、感じる温度も変わったりするんです。


お客様:それって、同じ温度でも色が違うだけで変わるって事ですか?あまり想像出来ません…


店員:重さも、白に近い色味なら軽く感じたり


お客様:……嘘ですよね?


店長:なら、丁度君の持っているコップは白色だ。私のは黒。ふむ…量も同じ。持ってみるといい


お客様:……あ、本当だ。黒の方が重く感じる…


店員:でしょ?色とは不思議なものです。店長が先程話していたのは、その色が持つ心理イメージなどのお話なんです


お客様:面白いですね。私、色の事あまり考えてなくて…そんな効果があるなんて初めて知りました


店員:絵画がお好きなのでしたら、きっと色を知れば、もっと素敵な日々を過ごせるかもしれませんね


店長:ま、そんな事はおいておいて。ユキナ君だっけ。色は決まったかい?


お客様:は、はい!この…赤色で。お願いします


店長:うむ。セイエン。お包してさしあげなさい


店員:はい。お買い上げありがとうございます。またのご来店お待ちしております


お客様:あの


店員:どうされましたか?


お客様:店長さん、セイエンさん


店長:ん?私も呼んだかな?


お客様:ありがとうございます。私、自分らしくこのまま好きなように表現していこうと思います。また来ますね!


店長:…うむ。良い絵画ライフを





店員:店長。嫌味を言うのかと思いましたよ


店長:嫌味?嫌味なんてそんなまどろっこしい事しないよ、私は。


店員:ユキナさん。前向きにどんどん創作してくださるといいですね


店長:あぁ。そうだね。誰が何色を好きだろうと、それを否定する事は誰にも出来ないのだよ。己の好きなものを貫き通す事も時には大事な事だ


店員:…1つ聞いてもいいですか?


店長:なんだね?


店員:黄色はどういう意味を持つのですか?俺の部屋、塗りたくられてましたけど


店長:黄色はね…仲良くなりたい、友達になりたいという想いが込められてたりするのだよ


店員:後で落としておきますね


店長:どうしてだい!!ねぇセイエン!ちょっと!私ともっと仲良くなろう!我が弟子よ!


店員:ただの店員です



店員:M「カラリ。カラリと。筆が合わさる音がする。小さな透明の世界に、広がっていく波紋。」


店長:M「また、迷う事があればいらっしゃいな。色は様々な力を持っている。アナタの道を示す標になるかもしれないよ」


店員:M「Nameless Color。(ネームレスカラー)。望む赤子」



〜終〜

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