番外編
第1話 豪勢な食事(side:ヨハン)
マリエルに婚約破棄を突き付けたその場でシャロンと結婚させられた
屋敷に戻ると落ち着くまもなく俺の荷物が離れに移された
少しするとシャロンの荷物も運びこまれてきた
その量が驚くほど多い
一体これだけの荷物をどうするつもりなのか理解に苦しむ
「ヨハン様、これから幸せになりましょうね」
いつものように腕にしがみ付きながらシャロンは言う
「ヨハン様、私、お父様の部屋からくすねてきてしまいました」
シャロンがそう言いながらテーブルに置いたのは札束の入った麻袋だった
ぱっと見で500万コール程あるだろうか…
「流石にまずいんじゃないのか?アジアネス家は余裕がないはずだろう?」
「いいんです。だってシャロンのせいでこれから長い間私たちの給料は天引きされちゃうんですよ?」
「…確かにそれは一理あるか」
そのシャロンを育てたのはアジアネス家なのだから
「とりあえず今日は町で食事をしませんか?」
「そうだな。色々あって疲れたし今から何かをする気にもならないしな」
「じゃぁこのお金で普段入れないようなお店に行きましょう」
それはとても魅力的な言葉に聞こえた
インディペイト家の長子として望むものはほとんどすべてと言っていいほど与えられてきた
でも父さんは現金はあまり持たせてはくれなかったのだ
それこそ月に10万コール程度のはした金だ
買物に関しても執事が同行して支払うため個人的に高級店に入ることは無かった
「ヨハン様?」
「何でもない。行こうか」
俺の懐が痛まないなら最高級の店を選んでやる
そう思いながらシャロンと町へ繰り出した
「どこがいいかしら…」
キョロキョロしながらシャロンは店を物色する
その仕草に周りの男がチラチラと視線を寄せて来る
それに気づいた俺はシャロンの肩を抱き寄せる
「どうなさったんです?いつも町ではこんなことしてくださらないのに」
驚きながらも喜びを隠せていない目が俺を見ていた
周りの男どもも悔しそうにこちらを見る
そんなことにどうしようもなく快感を覚える
「夫婦なんだからかまわないだろ?」
「夫婦…」
その言葉をつぶやきながらシャロンの頬が赤く染まる
食事の為の機嫌取りでしかなかったが、これが俺だけに向けられるものだと思うと悪い気はしない
その時、父さんが王族と行ったと言っていた店が目に入った
「シャロン、あの店にしよう」
「あそこは?」
「王族も利用する店だ」
「まぁ素敵!行きましょう」
チョロイ
早く行こうとせかすシャロンに苦笑しながら店に入った
「いらっしゃいませ」
店員は一瞬驚いた顔をしたがすぐに頭を下げた
俺がインディペイト家の者だとわかったからだろう
通された個室で豪勢な料理を堪能し俺もシャロンも上機嫌だった
店を出ようとするまでは…だが
「450万コール頂戴いたします」
「「え?」」
その驚きは同時にこぼれた
一回の食事で流石にその額はないだろう?
「流石はインディペイト家のご子息。最高級のお品ばかり選ばれるご慧眼には感服いたしました」
シャロンが金を出し渋っていると、控えていた男がそう言いながら近寄ってきた
「王族でも中々手を出さない逸品までためらう素振りさえ見せられないとは…カルア殿もさぞ安心されていることでしょうな」
「ヨハン様だから当然ですわ」
褒められたと思い気を良くしたのかシャロンは気前よく金を支払った
丁寧に頭を下げられ店を後にした
「お金があっという間に減ってしまいましたけど、もともとお父様からくすねてきたモノですし…素晴らしいお料理でしたからいいですよね?」
「あ、ああ。そうだな」
確かにうまかった
人の金でご馳走を堪能するのは初めてだが中々いいものだな
この時の俺は本気でそう思っていた
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