第14話 相変わらずの学園
学園最後の年
5年目にもなれば少しくらいはまわりも落ち着くと思っていたけど甘かった
「なーにやってんの?」
中庭の片隅にいた私にモニカが声をかけてきた
「あぁ…いつもの事、よ」
植木をかき分けながら視線を巡らせる
「…今日は何?」
「刺繍作品」
「今日提出の?」
「そ。まぁ見つかったところで汚れて提出は無理かもしれないけどね」
苦笑しながら言うとモニカは顔を顰めた
「予備は?」
「あるよ。だから『コレ』はパフォーマンスね」
クスクスと笑いながら返す
ものを奪われどこかに捨てられるのはもう日常と化していた
「いつも思うけど…それに何の意味があんの?」
「悔しがらせてあげようと思って。ふんぞり返ってあざ笑おうと待ち構えてる人たちを」
「…ほんっと、いい性格」
「ありがと」
「誉めてないし。でもそういう理由ならそろそろいいんじゃないの?」
「そうね」
私は頷き項垂れたふりをする
どこかから馬鹿にしたような笑い声が聞こえてきた
それを聞きながらモニカと顔を見合わせニヤリと笑いあった
「さぁ皆さん、今日は課題の提出が終わった方から帰っていいわよ」
先生の言葉に教室内がざわついた
「彼女達からしたら私をあざ笑おうと思ったら私が一から仕上げるのを待つしかないってことみたいよ」
「ふふ…どうするのかしら?何もせずに教室に居座るわけにもいかないだろうし」
犯人たちを盗み見ながらささやき合っていると、2人の女生徒が真新しいハンカチを用意した
どうやら今回のことはあの2人が首謀者らしい
「あら?あなたたちはやり直しですか?」
先生がそれに気づき二人の元に行く
「はい。ちょっと気に入らなくて…でも時間内に仕上げます」
「私も同じです」
「そう。その心意気は悪くないけど時間に間に合わなかったり、前回見せていただいたものよりクオリティが低ければ単位はあげられませんからね」
「え?」
「当然でしょう?期限までに自分のできうる最高の物を提出するのが条件ですからね」
「あ…じゃぁ私は前回までのを修正して…」
一人が必死で取り繕おうとする
「何と見苦しい。自分で言った言葉に責任を持つことは人として当然のことです。クラスの皆さんの前で言ったことくらい守れないでどうするのです?」
「申し訳ありません…」
泣きそうになりながら項垂れる
そんな2人を見て私もモニカも笑いをこらえるのに必死だった
それでも手元は動かし続けている
「私はこれで完成だけどモニカはできたの?」
「勿論完成よ」
「じゃぁ、帰りましょうか」
私達は立ち上がる
「お二人とも完成ですか?」
「はい。これです」
たった今仕上げた刺繍を先生に手渡す
「モニカさんもマリエルさんも相変わらず素晴らしい出来ですね」
「「ありがとうございます」」
「確かに受け取りました。気を付けてお帰りなさいね」
「はい、失礼します」
私達は挨拶を済ませて教室を出ようとした
「待ちなさいよ!あんたがこんなに早く完成させられるはずないじゃない!」
さっきの女生徒の片方が立ち上がる
「…どういう意味かしら?」
「だってあんたの作品は私が…!」
「ちょっと!」
そこまで言ってもう一人の生徒に止められる
「私の作品をあなたがどうしたのかしら?」
「…な…んでも無いわよ」
「クスクス…その先は言えるはずないわよね。せいぜい頑張って」
「そういうの、自業自得って言うのよ」
そう言いながら2人を冷めた目で見据えると心底悔しそうな顔をしていた
それを見て心底くだらないと思いながら教室を後にした
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