第10話 婚約者(side:シャロン)
ヨハン様の卒業が目前に迫って私は焦っていた
私の計画ではヨハン様の卒業までに婚約者の座を手に入れるはずだった
でもこのままじゃ…
どうしたものかと考えているとヨハン様がこちらにやってきた
「ここにいたのか」
「ええ…」
隣に座ったヨハン様の方に頭を預けると肩を抱いてくれる
いつもの優しいヨハン様だ
「ヨハン様、私、いい加減ちゃんとヨハン様とお付き合いしたいわ」
「シャロンそれは…」
ヨハン様は困ったような顔をした
「マリエルが入学してからあの子は以前の愛らしさを失ったわ。ヨハン様だってあんな子の婚約者でいるなんて恥をさらすようなものでしょう?」
「…」
それに最近週に1回しか放課後に会えないのも悲しいわ」
涙を浮かべてそう言うと額に口づけられた
「卒業を控えて色々忙しくてね。寂しい思いをさせて悪かった」
「ヨハン様…」
「でも俺の気持ちもわかって欲しい。俺がマリエルを婚約者にした理由をシャロンは知ってるだろう?」
「それは…でも…」
「マリエルが卒業する直前までの辛抱だ。それまでもシャロンの側に入れるように今色んな調整をしてる」
「え?」
私は驚いてヨハン様を見た
「卒業後、ここの事務局に入れるように手を回した」
「え?じゃぁ…ヨハン様が卒業しても学園で会えるの?」
「そう言うことだ。事務局の人間は個室を貰えるから今よりもゆっくり一緒に過ごせるようになる」
「まぁ…」
私は嬉しくなってヨハン様に抱き付いた
「シャロン、ここでそれはまずい」
「あ…ごめんなさい」
中庭だったことを思い出し慌てて離れる
「まだ昼休みが始まったばかりだな…おいで」
「ヨハン様どちらへ?」
「いいから」
促されるままついていくと生徒が立ち入ることを禁止されている旧校舎に入っていく
「ヨハン様ここは…」
「ここなら何をしてもバレない。おいで」
保健室だったのだろう部屋のベッドに押し倒された
使われてないはずのベッドは埃一つたたずいい香りがした
「これから忙しくなるから放課後会うのは難しい」
「そんな…」
自然と涙が溢れてきた
「だから卒業式までは昼休みにここにおいで。俺も来れる時は来るようにするから」
「それって…」
毎日抱いてもらえるということかしら?
しかもキスさえ禁止された学園の中で…
背徳感に心が震える
嬉しすぎてヨハン様の首に手を回すと抱きしめ返してくれる
そのまま抱かれてるうちに婚約者の事は頭から抜け落ちていた
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「…チョロイ女」
ヨハンは意識を手放したシャロンを見下ろし呟いた
「ここまで来て今さら中断するわけないだろ?それにこんなおいしい生活をお前ごときの為に手放すわけないのが分からないかね。ま、発散したいときくらいは昼にここに来てやるよ」
ヨハンはシャロンを置いて先に旧校舎を後にした
シャロンが目覚めるまで待っていたことなどないため、そのことを疑問にも思わないだろうシャロンをあざ笑いながら
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