第7話 仲睦まじい2人
「見て、ヨハン様とシャロン様よ」
「お似合いよね」
入学してから1年が過ぎてすっかり名物と化した2人の姿
今では誰もが認知しているのではないだろうか
それと同時に私への風当たりも強くなっていた
”バシャ…”
廊下で突然水を掛けられた
「つめた…」
春先でまだまだ肌寒い
一気に体が冷えていくのが分る
「シャロン様と姉妹と思えないわ」
「シャロン様は天使のように美しいのにあなたは何のとりえもない容姿。あなたがヨハン様の横に並ぶなんて許せないわ」
「身の程をわきまえなさいよね」
バケツを放り投げながらそんな言葉が飛んできた
わきまえるのはそっちだと思いながらも口にはしない
「このままヨハン様の隣に居座り続けるならこんなことで済むと思わないことね」
捨て台詞と共に彼女たちは去って行った
「マリエル?」
かけられた声に顔を上げるとヨハンと姉が立っていた
「何だ、その恰好は?」
「まるでぬれねずみね…ただでさえ不細工になったのに見られたものじゃないわ」
姉はニヤリと笑いながら言った
「子どものころはシャロンと同様天使のような顔だったのに…学園に入ってからランクがどんどん下がっていく。勘弁してくれよな」
髪をかき上げながら見下したようにヨハンは言う
「ヨハン様の隣にその顔が並ぶなんてやめて欲しいわ。ねぇ、だからヨハン様、そろそろ…」
意味ありげな言葉をヨハンに向ける
「それは今じゃない。とにかくマリエル、お前が卒業するまでにはその見た目をどうにかしろ。分かったな?」
面食いのヨハンらしい言葉だと思った
ただの女好きは、今では面食いの巨乳好きにレベルアップしている
ヨハンが裏で侍らせる女性は皆巨乳美人だともっぱらの噂だ
沢山の女性に手を出しているヨハンが、学園の中では姉だけを常に側に置く理由はきっと私が悲しむと思っているからなのだろう
そして私が悲しんでいることを知ったレオンが苦しむ姿を想像してるのは想像に難くない
「ヨハン様、時間が勿体ないから早く行きましょう?」
「そうだな。その胸を楽しむ時間の方が大事だ」
帰宅許可は取れなくても学園の授業終了後、門限の17時まで1時間半ほどの外出は自由だ
2人は週に3日、ヨハンがカルアに買ってもらったアパートで過ごしている
さっきの言葉を聞けば何をしているか等考えるまでもない
「マリエル、悔しかったら自分を磨きなさいな」
あざける様にそう言った姉はヨハンと共に去って行った
「残念ねお姉さま。私は別に悔しくなんてないのよね…それにヨハン様が毎日アパートで過ごしてるって知ったらどう思うのかしらね?」
そうつぶやく声は姉には届かない
何も知らず天狗になっている姉を馬鹿な女だと思う
「それも私にはどうでもいいことだけどね」
呟き私はその場を後にした
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