第1話 シャロンの抵抗
帰りの馬車の中では泣き続ける姉を母がずっとなだめていた
私は放心状態のまま父に抱き上げられ屋敷に戻ってきた
「お父様どうしてマリエルなの?」
リビングに入るなり姉が食ってかかる
「…こればっかりはなぁ…」
父はため息交じりに言う
「ヨハン様に惹かれたのは私よ?今日だってマリエルはヨハン様とほとんどお話しすらしてなかったのに…!」
「シャロン…」
父は姉を抱きしめた
「お前の気持ちを汲んでやりたいがこればかりはどうしようもないんだ」
「そんなの嫌よ…ヨハン様がマリエルとだなんて…私は好きになった人と妹の寄り添う姿を見続けなきゃいけないの?」
「すまない…」
父は姉がどれだけ訴えても色よい返事はしなかった
「お父様私だって嫌です。婚約しろというならレオンがいい」
「そうよ!年齢から言っても私の方がヨハン様に…」
「すまない」
父は力なくそう言った
「彼らに逆らうことは許されないんだ」
「…どういうこと?」
「マリエルの命を救ってくれたのはインディペイト様なんだよ」
「!」
姉が目を見開いた
まさかそこから繋がっているなど思いもしなかった
「私はお姉様のせいで望まぬ婚約をさせられたということ?」
「マリエルなんて事を…」
「だってそうでしょう?お姉様を助けてくれたのは感謝すべきだけど、だからってどうして私が望まない婚約をしなきゃならないの?そんなの酷すぎる!」
言いながら涙が溢れてきた
「マリエル…お前の未来を奪うようなことになるとは思わなかったんだ。でもシャロンの気持ちも考えてやってくれ」
「じゃぁ私の気持ちはどうなるの?私だってレオンに惹かれてるのに…!」
そう訴えても父は姉を抱きしめたままだった
「もうどうしようもないんだよ。インディペイト様はヨハン君の婚約者として2人のどちらかを選ばせると今日の顔合わせが行われたんだ」
「…どうして私達だったの?」
「お父さんの魔力を受け継いでるからだ。インディペイト様は父さんの魔力を取り込みたかったんだろう。そのために子供達を政略結婚させることにした。ヨハン君は何か望みがあったらしい。その見返りとしてこの婚約を受け入れたそうだ」
「あなた…それってマリエルが傷付く可能性が…?」
「…すまない」
「お父様…」
「シャロンを救うためになりふり構わず助けを求めたせいだ。全て父さんの責任だ」
そう言いながら頭を下げる父を見ながらさらに涙が溢れてくる
「何であんたが泣くのよ!ヨハン様に選ばれたくせに!」
「シャロン!」
叫んで部屋を飛び出して行く姉を母が追いかけて行った
「何とか婚約解消する方法を探すつもりだ。だからそれまでは…こんなことまだ幼いお前に頼むようなことじゃないが…」
「…気に入っていただけるように頑張ってみます」
項垂れる父を前に私はそう言うのが精一杯だった
姉はこの日から2週間部屋にこもり泣き続けた
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