第17話 黒幕
「葵、とりあえず応急処置するから。」
「っつ・・・」
「大丈夫?」
司が心配そうに顔を覗きこんだ。
「大丈夫っ。平気だよ。」
「・・・・。どうしてあんな無茶をしたんだ?」
「だって、私はレオンのボディーガードだよ?守るのは当たり前じゃない?」
「あれは、俺を守った様に見えたけど?」
「・・・・。」
葵は何も言わずにただ微笑んだ。
「・・・。これで少しは大丈夫だろう。病院に急ごう!」
司は車を急発進させた。
車を走らせていると葵が口を開いた。
「橘さんには助けられちゃったね。」
「あいつは、ああ言ってるけど葵の事認めてるんだ・・。でも・・・。」
司は何かを聞きたそうにしていた。
「葵?」
「・・・・。」
車を路肩に停めて葵の様子を見ると、気を失っていた。
「・・・葵。」
病院に着くと葵を抱き抱えた。
葵の顔に頬を寄せて抱き締めた。
「葵。俺を守ってくれてありがとう。」
(フワフワしてる。何だろう?この温もりがとっても安心する・・・。)
手術を終えた葵は病室にいた。
「んっ・・。」
朝の柔らかな陽射しを感じて目を覚ますと司が手を握っていた。
「葵?気が付いたんだね?大丈夫?」
心配そうな顔をする。
「うん。大丈夫だよ桜葉さん。ずっと付いていてくれたの?」
「ああ。良かった。」
司は優しい笑顔を向けた。
「・・・ありがと。」
葵は消えそうな声で言った。
*****
葵が病院に運ばれて数日。
司も樹も後処理に忙しくしていた。
しかし、司は忙しい中時間を見付けては葵の所に来ていた。
「シュヴェルツは素直に取り調べに応じてる。レオン王子の暗殺を依頼したのはアルミナの従事長だったらしい。レオン王子の弟に国王を継承させる為に。何でも、レオン王子の出自が気に入らなかったらしい。その従事長もアルミナで逮捕された。恐らく、シュヴェルツ同様に他の余罪も出てくると思う。後、フェルナンドさんは事情が事情な為にお咎めなしだ。レオン王子の助言もあってな。」
司からの報告を聞いていた葵は安心した顔をした。
「そっか・・・。フェルナンドさん良かった。・・・レオンは?今どうしてる?」
「レオン王子も事情聴取には協力的で、今はまた帝都ホテルに滞在してる。葵の事心配してたよ?」
「そうなんだ・・・。」
そう言って窓の外を見つめた。
司が帰り病室に一人で居ると電話が鳴った。
「はい。佐々木さん?」
『葵さん、お身体大丈夫ですか?藤堂も心配していますよ?あまり無茶はしないでくださいね?』
「ごめんなさい、心配かけて・・。でも、明日にはもう退院できますから。」
『そうですか。良かったです。それで遅くなりましたが例の件で・・・・。』
「わかりました。ありがとうございました。」
電話を切ると病室から見える星空を見つめた。
「レオン・・・。」
その時病室のドアがノックされた。
「アオイさん?マークレガーです。」
「どうぞ。」
ドアが開いて、マークレガーが花束を持って病室に入ってきた。
「お見舞いに来るのが遅くなってしまって。これレオンと俺からです。」
花束を葵に渡した。
「綺麗。ありがとうございます、マークレガーさん。」
「マークで良いですよ。アオイさん。・・・・。改めて、レオンを守ってくれてありがとうございました。」
「私はただ仕事をしたまでですよ・・。」
「それでも、レオンにとって貴女は特別な存在になったみたいですよ?」
「・・・私は、レオンには不釣り合いですよ。裏の世界でしか生きれない私にとってはレオンは眩しすぎます。」
葵はマークに微笑んだ。
「レオンにはもっと相応しい相手が居るはずです。」
「俺は、幼い頃からアイツを知ってる。こうと決めたら頑固ですよアイツは。」
「ふふっ、それは手強いですね・・・。」
「俺は明日アルミナに帰国します。向こうでまだまだ仕事がありますから。・・・一つアオイさんに聞きたかったんだ。何故フェルナンドが怪しいと思ったんだい?」
「瑞希達を別の場所に避難させようとした時・・呼吸が一瞬乱れたんです。まぁ、ただの勘ですよ。」
「流石ですね。勉強になりましたよ。」
「とんでもない。マークの協力のお陰で無事に解決出来ました。本当にありがとう。」
葵はマークを見上げて笑った。
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