第16話 決戦【2】
「無茶だ!利き腕にあんな怪我をしているのに・・。それに拳銃なんてどうして持ってる?」
司が呟く。
「アオイ・・。」
「貴方も軍人の端くれなら正々堂々と勝負するのね?」
更に煽る。
「生意気な女だ!良いだろう、のってやるよ。」
「そう。」
葵の顔から笑みが消えた。
お互い背を向けた。
「じゃあ、いくわよ?」
「5・4・3・2・1!!」
シュヴェルツが振り返ると既に葵が銃口を向けていた。
「なにっ?」
「遅いのよ。」
左手で拳銃を持った葵の弾丸はシュヴェルツの拳銃を正確に弾き飛ばした。
「勝負あったね。ちょっと自分の力を過信し過ぎじゃない?貴方の部下の方がよっぽど優秀だったわよ?」
シュヴェルツに銃口を向けたまま葵が近付く。
「くそっ!お前何者だ?」
「・・・。」
葵は酷く冷たい表情でシュヴェルツを見下ろした。
「銃を下ろしてください、葵さん。」
声の方を見ると、瑞希の首にナイフを突きつけた従者が歩いてきた。
「フェルナンド!良くやった!!はははっ!これで形勢逆転だなぁ?」
シュヴェルツは勝ち誇った様に言う。
「・・・・。」
葵の表情は変わらず冷静なままだ。
「このっ!生意気なんだよ!たかが女のくせにっ!!」
シュヴェルツが葵の頬を叩いた。パタパタと血が地面に落ちる。
「っつ・・・。」
落ちている銃を拾うと葵に突きつけた。
「レオン王子隠れてないで出てこい!!この女とお友達がどうなってもいいのか?」
シュヴェルツが叫ぶ。
レオンは飛び出そうとするが樹達に止められた。
「駄目です、出ていっては危険です!」
「でもっ!!」
「ははっ!腰抜けが!!信頼していた従者に裏切られた気分はどうだ?」
フェルナンドは悔しそうな顔をしていた。
「シュヴェルツ、貴方本当に卑怯な人ね。人間としても男としても最低だわ。」
「つくづく生意気な女だ、まずはお前から始末してやるっ!!」
引き金を引こうとした瞬間レオンが飛び出した。
「やめろっ!」
「ふん。やっとお出ましか?」
レオンの前に司と樹が銃を構えて立つ。
「フェルナンド・・・どうして?」
「レオン王子・・。申し訳ありません。」
今にも泣き出しそうな顔をしていた。
遠くでヘリのローター音が聞こえていた。
その時葵の電話が鳴った。
「・・・。人生最後の電話になるかもしれないから出ても良いかしら?」
葵は拳銃を向けられているにもかかわらず飄々と言った。
「はっ!こんな時に電話とはなぁ?良いだろう。せいぜい、別れを言っておくんだな?」
「もしもし。・・・・・。わかりました。ありがとうございます。」
「別れは済んだか?」
葵はシュヴェルツを無視してフェルナンドに視線を向けた。
「貴方の娘さんはアルミナで無事保護されましたよ。だからもういいんです。」
「ほ、本当ですかっ?」
「ええ。もう大丈夫です。」
「ありがとうございますっ・・・。」
フェルナンドは涙を流しながらナイフを下ろした。
「ふふっ、これで形勢逆転ねシュヴェルツ?」
「どういうことだっ!?」
叫んだ瞬間、上空に警察庁のヘリが現れた。
「司法省のマークレガーだっ!!全員大人しく投降しろっ!!」
「マーク?」
レオンが呟くと、ヘリが着陸した。
中からマークレガーに続き男性達が降り立つ。
シュヴェルツは観念したようにその場にへたりこんだ。
マークレガーはレオンの元に走り寄る。
「レオン無事かっ?」
「マーク?何故君が日本に居るんだ?」
「お前を助けに来たに決まってるだろ!」
マークレガー達によってシュヴェルツ部隊は全員が拘束された。
「葵!大丈夫かっ?」
司が真っ先に走りよって葵を支えた。
「ははっ、大丈夫っつ・・・。」
右肩を押さながら笑った。
レオンの元にフェルナンドと瑞希が近付く。
「レオン王子申し訳ありませんでしたっ。私は・・わたしは・・」
「マークから事情は聞いた。娘さんが無事で良かったな?」
レオンがフェルナンドに笑顔を向けるとその場に泣き崩れた。
「世良さん。」
樹が真剣な顔で葵と司の元に来た。
「橘さん・・・。私を逮捕・・する?銃刀法違反だもん・・ねっ?」
「樹っ!?」
「・・・。ありがとう、世良さん。司の事守ってくれて。あの時庇ってくれなかったら、司は今ここにいない。」
樹が頭を下げた。
「・・・。橘さん、頭を上げて?私はっ・・私の仕事をしただけだよっ。っ・・気にしないで。」
そこにレオンとマークレガーがやってきた。
「貴女が世良葵さん?レオンを俺の親友を守ってくれてありがとう。」
「マークレガーさん。こちらこそありがとうございます。色々協力して頂いて・・。助かりました。レオンも・・皆が・・無事で良かった。」
「アオイ・・・。」
「葵、とにかく病院へ!樹後の事頼めるか?」
「ああ、任せとけ。お前は早く世良さんを病院に連れていってやれ。」
司と葵は車に乗り込むと別荘を後にした。
「いい女だな?レオンが惚れるのもわかる。」
「マーク?・・・ああ。いい女だよアオイは。」
二人顔を見合わせて笑い合った。
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