第15話 決戦【1】
「瑞希、ちょっと良いかな?」
葵は瑞希を廊下に呼び出し何かを話し込んでいた。
司と樹は、警備の計画を二人で話し合っている。
そんな中、一人の従者が落ち着かないな様子で居るのを葵は見逃さなかった。
「とりあえず、瑞希さん達は二階の部屋で待機していてください。何があっても部屋を出ない様に。レオン王子は私達と一緒に居て下さい。どんなことがあっても我々が守りますから。」
樹がレオンに言った。
レオンは葵を見つめると葵が頷く。
「わかりました。宜しくお願いします。」
話が一段落すると葵がレオンに近付いた。
「レオン。この先何があっても私と瑞希の事信じてくれる?」
レオンに耳打ちした。
一瞬ハッとするが、直ぐに穏やかな顔になる。
「勿論だよ。俺はこの命アオイに預ける。信じるよ、アオイもミズキも。当たり前だろ?」
「わかった。ありがとうレオン。」
葵は笑顔をレオンに向けた。
司と樹が外で話をしていると葵がやってきた。
「桜葉さん、橘さん、おそらく今夜仕掛けてくると思う。」
「どうしてそう思うんだ?世良さん。」
「瑞希に聞いたの。アルミナで司法省が動いてるって。多分相手も焦ってる。仕掛けるなら今夜だと思う。」
「今夜・・・」
司の表情が強ばる。
「・・・どんな事があってもレオンだけは守って?」
「何を言ってるんだ?葵!」
「お願い。それだけは約束して?」
葵にいつもの笑顔はない。
「・・・。わかった。必ずレオン王子は守る。」
「ありがとう、橘さん。」
葵は穏やかに笑った。
深夜。
別荘に近付く人影があった。
樹の指示通り、瑞希達は二階の部屋で待機をしていた。
レオンは葵、司、樹とリビングに居た。
(来た。)
「レオンこっちに。」
葵がレオンを窓から遠ざける。その瞬間、窓ガラスが割れる音がした。
四人は咄嗟にキッチンの裏側に身を隠す。
室内に侵入してきた人影が照明に向かって発砲するとリビングは真っ暗闇になった。
微かに月明かりがさす。
司と樹は拳銃を取り出して相手の様子を伺っていた。
「くそっ、これじゃ何も見えないなっ!」
樹がキッチンの裏からそっとリビングを見ると的確に樹を狙って発砲してきた。
「っと・・。まずいな。」
侵入してきた人影がジリジリ近付いてくる。
(この暗闇で正確に狙ってる。暗視スコープをつけてるの?)
「・・・。」
「葵?」
隣に居た司が葵を見つめる。
葵はスマホを取り出して何か操作をしていた。
「桜葉さん橘さん。私に考えがあります。」
「考え?」
「私が囮になります。その隙にレオンを外に。」
「駄目だ!そんなの危険すぎる!」
司が反対する。
「今はレオンの安全が何より大切です。大丈夫ですから。」
そう言うと、葵は飛び出していった。
「あおい!!」
司が叫んだ瞬間、飛び出した葵に銃口が向けられた。
葵は手に持っていたスマホを操作すると侵入してきた三人に向かってフラッシュを浴びせた。
暗視スコープを着けていた三人は床にのたうち回る。
それもそうだ、暗視スコープは僅かな光を何倍にもして暗闇でも相手を見ることが出来る物だ。
そこにカメラのフラッシュを浴びればたまったものではない。
室内に侵入してきた三人は暗視スコープを外して目を押さえた。
「くそっ!目が・・!」
「今のうちに外に!!」
三人は外に出ると、後を追うように葵も外に出てきた。
辺り一面は怖い位の静寂に包まれていた。
「桜葉さん!レオン!」
葵の声に反応して、司がレオンを庇うように覆い被さった。
その瞬間銃声が轟いたが、思っていた衝撃がない。司が目を開けると葵が右肩を押さえながら立っていた。
「あおい!!」
司は葵に近付こうとしたが、樹が二人を物陰に連れていく。
「樹?葵が!!」
「駄目だ!」
「っつ・・でもっ!」
司が心配そうに葵を見つめた。
葵と人影が対峙する。
「貴方がシュヴェルツね?」
「ふん。たかが女ごときに俺の部隊がやられるとはなっ!」
「ちょっと、油断しすぎなんじゃないの?」
「それは、お前もじゃないのか?」
「不意討ちする様な人に言われたくないね。」
ジリジリとした殺気が二人を包んだ。
「シュヴェルツ、私と勝負しない?」
おもむろに葵は言った。
「勝負だと?」
「そう。早打ち勝負。お互いに背を向けて5歩歩いて撃ち合う。どう?負けたらレオンの暗殺は諦めるの。」
「・・・。」
「あら、自信がないの?だったらレオンの暗殺なんて諦めるのね?」
葵はわざとシュヴェルツを挑発するような事を言う。
「駄目だ!葵!」
飛び出そうとする司を樹が止める。
「司!止めろ!!」
「でも、葵が!あんな怪我をしてるのに無理だ!」
「シュヴェルツどう?勝負するの?しないの?」
シュヴェルツは葵の怪我を見ると、ニヤリと笑いながら言った。
「良いだろう。勝負してやるよ?その状態で俺に勝てるならな!?」
「葵、駄目だ!!危険すぎる!!」
司が葵を止めようとする。
「桜葉さんは下がってて。」
葵の有無を言わさない雰囲気に司は何も言えなくなった。
しかし、葵の右手からは血が滴り落ちていた。
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