JDG~全円の世界

西野ゆう

社説

読者の方々は「バルーンフェスタ」をご存じだろうか? 世界中から多くの気球、色とりどりの気球が集まり、同時に、世界中から多くの観光客が訪れる。●その映像はあらゆるメディアで紹介され、年々熱を帯びているので、ご存じの読者も多いのではないだろうか。●競技というからには、確かに得点が存在し、勝ち負けが決まる。だが、大空の中で風を読み、優雅と呼ぶに相応しい飛行の様子に、熱気球競技は、スポーツを超えたスポーツだと称されることがある。●その圧倒的なスケールに人々は目を奪われる。では、なぜ人々は気球に目を奪われるのか。●気球競技、バルーンフェスタは、その色が特に注目される。青空に、まるで点描のように無数にちりばめられる極彩色の気球たち。●バルーンフェスタ以上に巨大なキャンパスに描かれる絵画は、宇宙から見た地球以外には存在しない。すなわち、地球上で見られる最も巨大な芸術なのだ。●時に固有の色が国や民族を表すことがある。カナリア色、ラスタカラー、などといった具合だ。また、隣の色と交わりながら赤から紫へと移りゆく虹は、平和の象徴としても描かれる。●令和の時代。コロナ禍にあって、バルーンフェスタも他のイベントと同じく中止という苦渋を飲まざるを得なかった。それが2022年11月、ようやく開催されることになった。2018年以来、実に四年ぶりの大会だ。● 参加機数、参加国数、タスク(競技)数も過去最多の大会になる予定だ。 その中で、投げ落としたマーカーの、ターゲットまでの近さを競うJDG(ジャッジ・ディクレアード・ゴール)のタスクに、人々は特別な願いを込めている。●全円の虹。ターゲットの目印を全円の虹にしたのだ。無論太陽の位置で虹の位置も変わる。正式なターゲットをできるだけ虹の中心になるよう、大会運営団体は放水の場所や角度を計算ているらしい。競技者は、虹の向こう側に向かってマーカーを投げ入れることになる。●このアイディアの発案者である地元の男子高生、大空おおぞら奏多かなた君(17)は「元々のアイディアは『かわらけ投げ』から連想したもの。願いを込めて目標の輪に投げ入れるかわらけ投げと、ターゲットめがけてマーカーを投げる気球の競技が似ていると思った。競技者コンペティターの皆さんには、コロナ禍の終息と、世界平和を願って高得点を狙ってほしい」と語っている。●その大会は11月に行われる。多くの願いが、虹の向こうに届くことを祈る。(文:梶北明日香)

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