黒船来航と王国の崩壊
第37話 守護天使の役割
アイランドフィールド(仮)はこの国全土を守る為の結界であり、キングスフィールドはこの国の国民を守る為でもあり、縛る為でもある結界である。
そのアイランドフィールドが失われて、キングスフィールドだけが残った現状はエルセイラム国民、特に力を持つ貴族にとっては最悪の状況である。
「アミエル!青くなってないで何とか言え!」
つまり自分たちは制約を受け続けている中、異種族への力の干渉が無くなったということ。
しかも時代は秋。
人間にとって必要な食べ物を収穫する時期。
ただ、ほとんどが海であり、国境という国境を持たない異種族に季節という概念はない。
秋に争い事を起こさないのは、四季を持つ地上の、そして地上に住む人間だけの都合である。
『分からないのよ!ミハエル様が私をお見捨てになったのか、それとも王家で何か起きたのか……』
「教えられる範囲でいい。教えてくれ。今は緊急事態だ!お前の制約も……」
『分かってる!分かっているから混乱しているの……。守護天使様に何が起きているのか……。ミハエル様の神の体に何か起きるってあり得るの?』
「俺が知っているわけないだろ。その守護天使ってのも俺は初耳なんだぞ!?」
マーメイドの知らないことを、どうしてマーマンの出来損ないが知っていようか。
メンマが人魚姫について知っているのは一つだけだ。
これは誰でも想像がつく。
どうしてマーメイドプリンセス、人魚姫と呼ばれているのか。
人魚姫とはマーメイドの姫、——それだけの筈がない。ただの姫ならば、これほどの違いが生まれる筈がない。
この国においてもそう。
伯爵だからものすごい力を持っていたりしない。
つまりこの国で言う王家と同じ。
マーメイドプリンセスはマーメイドとは別個体である。
ただマーメイドから生まれてくることも事実。
——可能性があるとしたら、マーメイドの突然変異。
もしくは神の加護、それほどにマーメイドプリンセスは神に近い存在だ。
通常のマーメイドは、ある程度個人差があるにしても、アミエルのような髪色をしている。
ただ、マーメイドプリンセスは生まれた時から毛色が違う。
鱗が白色であり、そして成長して上半身が人のソレと同じになり、十分な量の魔力的な力を得ると、髪と鱗が金色に変わる。
そも、メンマの最終目標、やらなければならないことは——
ゼバリアスの乱で連れ去られた、『幼きマーメイドプリンセスの奪還』である。
でも、海ばかりの世界だ、どう足掻いても探しようがない。
因みに、メンマが人間が住む海に打ち上げられたのは、以前にも話したかもしれないが、ただの偶然である。
でも、あの裏切り者ゼバリアスが、人間がバックにいると言ったのだから、メンマはこれを好機と捉え、以上、この国を調べる必要があった。
『守護天使様は文字通りこの国を守護する為の結界を張っている御方。ガブリエル様のキングスフィールド、ユリエル様のキングダムフィールド、ラファエル様のロイヤルガーデンフィールド、そしてミハエル様のミレニアムフィールド。つまり貴方が言うアイランドフィールドはミレニアムフィールドのこと。……つまりミハエル様が————』
頭の血が引くとはこの事を言うのだろう。
メンマは一瞬気を失いそうになった。
立ちくらみはしなかったけれども、魚だけに。
複雑な結界が張られていることは知っていた。
だから、その結界が四つもあったという驚きはない。
王家や公爵家には一部の人間しか会えなかったのだ、——ロイヤルガーデンフィールドという名前はさておき、そこに結界があることは分かっていた。
問題は学生たちがいつも受けている制約の話だ。
あれらはキングスフィールド外でも有効だった。
そしてそれがどの程度の結界なのかが分からない。
普通に魔法が使えたとアリアは言っていたが、その普通のは如何程のものか。
……王国の平穏を保つ必要があるなら、王族領のみを縛るキングスフィールドだけでは意味がない。
それはある意味分かりやすいカモフラージュだったとしたら、他領の貴族は知らずに『牙を抜かれている』可能性がある。
『つまり王家がやっていたことは……』
——そも、王家とは
ただ、メンマの思考は突然開かれた扉により、遮られた。
「メンマ!空が!空が真っ黒なの!!」
メンマの予感は的中、——やはり王家に世界の平穏を嫌う者がいる。
だからミハエルの線が消えたわけではないが、アミエルがあれほどまで慕っているのだから、別の可能性を考えるべきだ。
メンマのみならず、今の国民は侯爵家を除いて、王家のことを何も知らない。
『アミエル、お前に命令する。ミハエルがまだ生きているか確かめてこい。アリア、よく戻ってくれた!』
ガタガタ震える淑女を安全圏に誘導するべきだ。
おそらく侯爵家はロイヤルガーデンに入ることができる。
間違いなくそれ以外の場所は最大級の危険エリアである。
さらに彼女は——人間に戻っている状態では弱いし、目も見えない。
キングスフィールドの制約のお陰で。人間に対してだけは強いかもしれない。
でも、彼女が強いという訳ではない。
ただ……
「いえ。私たちクレーベン家はミハエル様の許しがあったればこそ、ロイヤルガーデンに入ることができた。だから戻ることはできないし、あの方が死ぬることなどあり得ない。」
『なら!今すぐ全員を侯爵位にあげるように打診しろ!敵はおそらく鳥人族。このままでは一方的にヤられるぞ!!』
「それは無理。侯爵位は王家に血を分けてもらった者たち。そも、爵位の変更は王の許可無しには出来ない。」
このままでは八方塞がり。
ただ、まだ手がない訳ではない。
四つも侯爵家がある。
ローエングラム侯爵家、ヒルジャクソン侯爵家の二つの侯爵とは面識がない。
それにロイヤルガーデン内で何かが起きている都合上、彼らが繋がっている王族がこの国の崩壊を望んでいる可能性がある。
ならば、少なくともミハエルが接触していたと思われるサッチマン学長に賭けるしかない。
『今から学校、校長室へ向かうぞ。悔しいがあいつを頼るしかない。アリア、アミエル!できる限りの人間に緊急事態だと伝えろ!それから……、あ、そうか。』
そして人面魚は水槽の下に設置された水抜きようの穴に向かって呪文を唱えた。
【
いつもやっているのは情報のダウンロード、ならばアップロードできるのも『インターネット』というやつだろう。
『全員に告ぐ!今、この国は異国による攻撃を受けている。各自、空からの攻撃、そして降ってくるモンスターに注意せよ。そして伝える手段があるなら、今の話を王族領以外の人間にも伝えろ。これは冗談ではない。疑う奴がいたら、窓から外を見てみろ!!』
……五年前と同じ手口が行われるとしたら、もうすぐ空からモンスターの卵が大量に投入される。あの時の鳥人族の最初の一手は……
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