不甲斐ない苛立ち

今日は大学に行こうと思う。

流石に自分でもこの怠惰に恐怖を感じた。

ワキンに挨拶をする。

「今日は大学に行ってくるよ。」

金魚はこっちを見て

「おはよう、今日も頑張ろう。」

と言う。

心が落ち着いた。

確か十時からだったから家は九時くらいに

出れば間に合うはずだ。

心臓の鼓動が速くなるのを感じた。

こんなことで気持ちを動かされる自分が情けなくなった。

他の大学生にとってはいつも決まった時間に起きて、

決まった交通手段で大学に行くのは「日常」

なのである。

「ねえ、なんで貴方の日常は私にとっての日常ではないの?」

そう心で問いかけても虚しさが加速するだけだった。

家を出る。


久々にみる同年代の人は皆輝いて見えた。

俺を置いて生き急ぐ様にも見えた。


「置いていかないでよ。」


小学二年生の夏、公園でやった鬼ごっこをおもいだしていたら駅に着いた。

拙い記憶を頼りに自分が乗るべき車両を探した。

脳はともかく、足を動かさないとこの街にはついていけない。

感覚を頼りにして、行くべき道のりを進んだ。

しかし、約四ヶ月のブランクがあった。

東京の街は恐ろしく変化を繰り返す。

実際には変化していないがそう感じる。

自分が進んでいる道が正しいかどうかわからなくなる。

看板の表示を見てもそもそも地名を、意識的に詰め込んだので忘れてしまっていた。

「あれ、おかしいな」

そう呟いて狼狽してしまった。

どこに行けば良いのかわからない。

心の高まりを抑えることに精一杯で事前の準備など何一つとしてしていなかった。

まさか、自分が行くべき場所を高まりを抑えられずに見失うとは思いもしなかった。

かと言って駅員さんに問いかける勇気もなく

携帯電話でようやく突き止めた乗るべき電車は

もう俺を置いて、発車していた。


何故だ。

何故だ。


何故乗る電車すらわからなくなったのだ。

自分への苛立ちが抑えられず

人混みの端の方で

涙を流した。

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