おもてがわの一部
その後、〈本部〉に居た僕を含めた四人は昨日蛭ヶ崎が言っていた密会場所へ行った。
こんなカモフラージュも無い素朴な制服のままでこの場所に居たら絶対に誰かに気づかれてしまうではないかと僕は言ったが、『ZENHAISOGE』と蛭ヶ崎が英語風に
そんなこんなで僕は今三人に押し競饅頭のような状態の中、一人汗を掻いている
「全然来ないね。」と片桐が興味のなさそうな声で言う。
「待てばきっと来るよ。」と紫田が応じる。
蛭ヶ崎はというと真剣な眼差しで昨日密会を目撃したであろう場所を黙視している。
そんなに真剣になるかと思いながら僕も蛭ヶ崎が見ている場所を見る。
「ねぇ、もう来ないんじゃない?あたし疲れた。」と片桐が駄々をこねた直後だった。
「もう来ないで!」と明らかに怒るような女性の声がした。流石に僕でも気づく程の大きさの声だった。
そして、この場所が相手から丸見えなのに気づいたかのように僕達はゴンズイ玉よろしく直ぐ横にある茂みに隠れる。僕からしてみれば今更かよと思ってしまうところがあった。
その直後一人の女子高生が走って現れた。きっと彼女が原道美香なのだろうと思った。
そして、そのあとに出てくのはきっとさいとうせんs、、、、と思っていたが予想外のことに現れたのは髙橋幸人だった。
他の三人も先生が出てくると思ったらしくこの絵面に驚いている様子だった。
「なんでここまでついてくるの。」と原道らしき声が響く。
「俺はお前のことが心配なんだよ。変な噂だって流れてる。」と聞き覚えのある高橋の声もする。
「あ、あれはホントの話よ。」と原道はたじろぎながら、言い返す。
「嘘だろ、噂は噂なだけだろ。」と高橋も負けじと言う。
「残念だけど、本当なんだよ。」と声がする。二人の声ではないのは明確且つその声の主は人に興味の無い僕でも判別できた。
そう、斎藤先生だ。
横からパシャッというシャッターを切る音がする。紫田が証拠の写真を取っていたのだ。
仕事早いなぁ、と思いながら僕は蛭ヶ崎の方に僕は目を向けた。彼は、おぉラスボス登場!!と言わんばかりの顔をしていたので、僕は少しばかり心配になった。何故なら蛭ヶ崎はこの一件をただのネタにしか見ていないように思えたからだ。現にこの状態は普通ではない。
「そんなの嘘だろ」と高橋が嘆く。
それは本物の嘆きに僕は見えた。蛭ヶ崎の言っていたことは本当なのだな。と確信した。
「高橋くん、諦めなさい。」と姫を連れ去る悪役よろしく言う。
きっと高橋にとっては相当苦痛なのだろうと僕は勝手に思った。
あの現実離れした現場から〈本部〉へ戻ってきた僕達は蛭ヶ崎以外はとても信じ難いという表情を、蛭ヶ崎は待ってました!というような餌に食いつく魚のような表情をしながら新聞の下書きをしている。〈本部〉には蛭ヶ崎がシャーペンを動かす音だけが響いている。
「ねぇ、このネタ辞めない?」と最初に口を開いたのは片桐だった。流石に片桐もまずいと思ったのだろう。口調からそれが伝わる。
「いや、俺はこの事を記事にする。」と蛭ヶ崎が返す。
「なんで?遼太郎君だって見たじゃん。あんなの合法的っていえないし、斎藤先生がやることとも思えない。」と片桐が涙混じりで蛭ヶ崎に訴える。
「それは俺だって同じ事を考えてる。あれは斎藤先生じゃない。」と蛭ヶ崎が意外な返答をする。
「え、どういう事?。」と片桐は蛭ヶ崎に疑問をぶつける。
「俺はこの一件の裏側を記事にする。」と蛭ヶ崎がはっきりと言う。
「さっきも言ったように斎藤先生があんな事をするとは思えない。だから俺は真相を突き止める。」と蛭ヶ崎が放った。てっきり自分だけが見つけた餌だと勘違いしていたのかと思っていたから僕は安堵した。
蛭ヶ崎の推測によると斎藤先生は誰かに脅されている。何故なら先生は弱みを握られているからだ。そして先生は先生を脅しているやつに逆らえず原道を自分の車の中に連れ込んだ。車の中で原道は先生の状況を知り原道は話に乗った。きっと斎藤先生のことだから連れ去った振りをして途中で車から下ろして逃げられたということにしているのだろう。とも言った。しかし、この一連の流れを知らない高橋は真意に受け止めてしまい、職員専用の駐車場までつけてきたそれを俺たちは目撃してしまった。というようなものだった。
少々ツッコミどころ満載な部分はあるが、今口を出せば面倒なことになるのは目に見えているため、何も言わないでおこうと決めた。
この蛭ヶ崎の推測を聞いた途端斎藤先生の事を心配する気持が芽生えた。他のメンバーも同じ気持だろうとも思った。
「明日、先生にあったらちょっと声を掛けよっかな。」と紫田が言う。
「そうね、何か心配事が無いかあたしも聞いてみる。」と片桐がやけに真剣に言う。
「って、いうかそれは流石に真正面すぎでしょ。」という蛭ヶ崎のツッコミで場が和む。
いつの間にか、先生を守ろうという雰囲気になった。
今日はここで解散しよっか、という蛭ヶ崎の言葉を合図に皆は〈本部〉を出た。
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