第12話 パーティー
「お集りの駆け出し冒険者諸君。こんばんわ!!アリエス・ギルドのパーティーにご参加いただきありがとう!!」
ここはアリエス・ギルドの本拠地。まるで城のように大きいホーム。その中にある会場に俺たちは収集された。周りには、駆け出しと思われる冒険者たちがおよそ十人弱いる。
そして今、高々とステージで声を張り上げ、あいさつしたのは
「私はアリエス・ギルド団長のテルタ・ティリオネルだ。今回の遠征には、事情があり参加しないが皆の参加を歓迎しよう」
テルタはバランスのいい引き締まった体系に、白と青のローブを纏っている。背中には細くそして鋭い槍が一本。その堂々たる在り方は、パーティーを引っ張る団長のそれだ。
「それでは、今回の遠征のリーダーに、遠征の説明など詳しくしてもらう」
そういうとテルタは横に佇んでいたドワーフの男に任せた。
「俺がアリエス・ギルドの副団長シュレン・ブルガン、レベルは19。よろしく」
そう簡潔に自己紹介した男が例のドワーフ。たくましい髭と使い込まれた甲冑。そしてなんといってもはち切れそうなまでに鍛えられた体。背中には自分の体と同じくらいの斧を背負っている。
「まず、今回の遠征は三日間を予定している。目標階層は二十三階層。いわゆる中層の下位層だ。この階層が単独探索のエンドラインとされている。いくら強いものでも、様々な理由から単独探索が困難となる」
中層は危険度が高いため、その中が三つに分類されている。下位層・中位層・上位層と言う様に危険度が上がっていく、らしい。
「三日間で二十三階層を目指し、最終日にその階層の
そう図太い声で聞くと、狼人の男性が挙手する。
「ワープポイントは使用すると丸一日効果が消えると聞いたんすけど、ほかの冒険者が使用したらどうするんすか?」
彼は少々ちゃらけた感じで聞くが、気にした様子もなく答える。
「その点は安心していい。うちのギルドに魔法陣を起動可能なスキルを持つ者がいる。そいつが魔法陣を起動する予定だ」
なるほど。スキルの種類は人の数ほど存在する。そんなスキルがあってもおかしくはないだろう。
「質問が他にないようだから次に行く。遠征時、諸君らは三つのグループに分かれてもらう。下層は道が狭く大人数では統率が取れにくいため、中層までそのグループで行動することになる。中層からは全員で目標階層を目指す。なお、下層と中層の間には休憩階層が存在するためそこで合流を待つこととなる」
休憩階層と言うのはいまいちわからないが、まあいいだろう。
「グループ分けは先日送った手紙に参加者の名簿欄があったはずだ。その縦列が同チームだ。そしてチームごとに、我がギルドの団員が付き指導する」
手紙でミアの名前の下に俺の名前が記載されていたということは、同じチームだ。
「諸君らにとって中層は未知の連続になるだろう。諸君らも戦闘の機会が多々ある。だが、これが冒険の醍醐味。そのような状況で己に何ができるのか。考えられる知恵をつけなさい。」
彼の言葉が心を掻く。己に何ができるのか、俺にはできることがあるのだろうか。
この遠征で何か変われるのだろうか。
そんな疑問が頭を埋める。
「これで以上だ。なお細かな持ち物や注意事項は配布した資料に書いてある」
そう締めくくり始められたパーティー。
なお、風呂事情は記載されていませんでした。
◆
会場が明るくなり、パーティーが始まった。豪華な料理がテーブルに並べられ、各々が好きな食べ物を皿によそる。周りの駆け出したちは、ギルドの団員や同期たちの元へと向かう。
誰の元へ行こうかと周りを見ていると、赤いドレス姿のミアと目が合う。
透き通るような白い肌と髪、ルビー色に輝く瞳が、ドレスの赤とマッチして、この会場でも異彩を放っている。
当然彼女は参加しているに決まってるのだが、今はあまり話したくない。周りの冒険者も彼女に目を奪われている。誰もがその美しさに目を奪われ、ぽかんと口を開けている。
しかしなんてったって、ギルドの団員が彼女に話しかけるタイミングをうかがっているからだ。勧誘が目的なのは言うまでもない。
だが、彼女はこちらに寄って来る。
「スーツ姿も似合うね。さすがはエルフ君だ」
俺の黒のスーツ姿をみて、肩をポンポンたたく。スキンシップは苦手だ。あと子ども扱いしないでほしい。
「馬鹿にしないでください」
俺はその手を振り払う。
「あまり触らないでください」
「はははっ、ごめんごめん~。そうだった、エルフ族は高潔を重んじるんだったね」
彼女は俺の言葉を気にした様子もなく、ころころ笑う。
「……体、大丈夫そうで何よりです」
「あ~、一応治療受けたからね。今だったらなんだってできそうだよ?」
「しなくていいです」
昨日、ダンジョンで出会った怪物に一撃を受けたのだが、この様子なら大丈夫そうだ。
昨日はあの後、ギルド省に怪物について報告をした。その際聞いたことだが、ここ最近下層での未帰還者が急増していたらしい。
およそ、あの怪物で間違いはないだろう。そしてギルド省は変異種の注意喚起と共に、調査・討伐を行うと言っていた。
料理を盛っていく彼女は、どうやら知り合いがいる様子はない。
「友達とかここに参加してないんですか? ほら、アカデミーの」
「参加してないみたいだね。アカデミーって言ってもたくさんあるからしょうがないね」
どうやらお互いボッチだそうだ。
俺もさらに料理を盛っていく。
話す人がいないならこの豪華な料理を食べるしかない。
こんなもの食べれる機会そうそうないからな。
緊張の糸がほどけたこの会場。
そこかしこから、楽しそうに話す声が聞こえる。
すると、こちらに近寄って来る女がいる。
茶色がかった赤髪に赤目。
身にまとうオーラが大物であることを物語っている。
彼女についていけば、どうにかなってしまいそうな、そんな安心感。
歩き方すらも堂々としている。
たしか、このギルドの団長のテルタ・ティリオネルだったか。
およそ、ミアの勧誘目的だろう。
しかし、彼女はミアを見た後に、俺を瞳に映し、目を見開く。
「…………っ」
その表情が何を表しているのかは、俺にはわからない。
そして、何か納得がいったようにフッと笑い、口を開いた。
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