【 エピローグ 】


 ――今日、またここへ来てしまった。

 

 ミントと中学の頃、毎日来た、この夕日が綺麗な小さな川沿いの土手。

 いつものように、コンクリートでできた階段を上から一つずつ数えて、3段目に腰掛ける。


 また自然と涙が止まらなくなる。

 零した涙で、階段のコンクリートが悲しく濡れ広がる……。



 その時――。




「アズ……」



 幻聴か、頭がおかしくなっちゃったのか、ミントの声が聞こえてくる……。



「アズ、聞こえてる?」



 いや、聞こえてない……。気のせいだ。今日も頭がおかしい。

 何かを振り払うかのように、頭を左右に振りながら、クシャクシャッと髪をむしる……。



「いい加減、こっち向けよ」


『ツン、ツン』


「えっ……?」


 誰かが私の背中をツンツンする……。


「泣いててもいいけどさ、アズらしく笑ってた方が俺は好きだな」



 ゆっくりと、声の方へ顔を向ける。



 見上げると、そこには、自転車に乗ったミントの姿が……。



「荷台、新しいの付けといたから、後ろ乗ってくか。久しぶりに」


 そう言ってミントは、親指を立てながら、後ろを指差す。


 新品の荷台だ。私だけの特等席……


 やっと見つけた……。


 ミントが照れくさそうに、頭を掻きながら笑っている。



 私は……、


 やっぱり、ミントのことが好き……。



「予備校、ふたりで行くぞ。来年こそ、ハイタッチだからな」


「うん……」


 ふたりの『おめでとう』は、少しだけおあずけ。

 でも、彼と一緒ならの乗り切れそうな気がする。


 涙目になりながら、ミントの好きだっていう笑顔を久しぶりに大きく作った。


 あの頃のように……。



 ここから見上げた今日の空は、雲一つないミント色。




 彼の新しい自転車の荷台には、猫のバックチャームが2つ、春の風に仲良く並んで揺れている。





(了)



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ハルイロ・ミント 星野 未来@miraii♪ @Hoshino_Miraii

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