【 大学受験 】


 塾で最後の模擬試験の結果が配られた。

 それを見ると、私の志望する『西京さいきょう大学 文学部』は、『ディー判定』。

 この判定では、合格するのはかなり難しい状況。


 私がどうしてこの難関大学を選んだのか……。

 それには、理由がある。


 ミントが、この西京大学理工学部を受験すること、それを知ってしまったからだ。

 なぜだか、自分でも分からない。

 どうして、彼と同じ大学を受けないといけないのか。


 昔の関係のままだったら、理解はできる。

 でも、今のミントとの関係では、たとえ同じ大学に合格したとしても、高校合格の時のように、ハイタッチしてふたりで喜ぶことはないように思う。


「あ~、どうしてこの大学に申し込んじゃったんだろう。他の大学でも良かったのに……」


 西京大学の入学試験まであと残り1週間。

 もう、やるしかない。


 机に向かい気合を入れる。

 邪念は不要。


 でも……。


 鞄に付いているパステルピンクの猫のバッグチャームが目に留まる。


 集中しないといけないのに、なぜだかそちらに目が行ってしまう。


 この時の私は、大学受験のことで頭がいっぱいで、ミントとの間にあんな事件が起きるなんて、これっぽっちも思ってはいなかった……。



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