【 バッグチャーム 】


「よう。とも、アズ、おはよう」


 そう言いながら、彼、青山光翔あおやま ミントは、いつものように私の席の隣の机に、鞄を乱暴に置く。


「よう、相変わらずモテモテだなミント先輩」


 すかさず智美が嫌味の攻撃。

 そんなことは全く効きませんと言わんばかりに、気取った顔で私の席の右隣に座る。


「アズ、おはよう」


 彼が座ったまま、私の顔を覗き込むように声をかけてきた。


「お、おう、おはよう……」


 私は俯き加減で、彼の顔も見ず、1限目の授業の教科書を机の中から取り出し準備をする。


「相変わらずお前の機嫌、ピサの斜塔しゃとうみてーだな」

「ほっとけ、キザ野郎」


 いつからだろう、こんな関係になってしまったのは。

 中学の頃は、あんなに仲が良かったのに……。


 ふと、今日も彼の鞄に目が行く。

 でも、彼の鞄には、付いていない。私たちの『アレ』が……。



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