第20話 師匠
俺は戦いで満身創痍(攻撃くらってないはずなのにおっかしいな)、一歩も動けなかったので、ミシルに肩を担がれてのろのろと帰っていると、槍司が丁度駆けつけてきた。<ヒマワリ>の連中が俺たちの行く先の近くをうろついているとの目撃情報があったらしい。おそらくあの不運な女性には連れがいて、その人が通報したのだろう。驚くべきは槍司がやたらデカい霊槍に魔法の絨毯のごとく乗って登場し、俺とミシルを後ろに乗せて魔女○でみたような軌道で数秒のうちに基地に帰還できたことである。霊槍の効果なのか思ったより風を受けず、左右に振り切られそうにもならず、街を一望できてとにかく快適だった。風になったようとはこのことか。霊世に来た一番の思い出はと聞かれたら間違いなくこれだろう。ちなみに槍司は前を向いたまま終始無言、ミシルは完全に酔ってしまっていた。
帰って来た時にはもう日が入り始めていた。昼飯を食べていなくて腹が減っているのに今更気付いた。何かそこらへんの感覚が曖昧になってきている気がする。
ところで嬉しいことに休暇を3日もらった!最近ずっと体痛かったもん!平気で気絶させてくるしさあ、アリスの蹴りネタ扱いされてるけどあれめちゃめちゃ効くんだぞ!?しかも全然ケガ人労わらないしさあ、全く、随分扱い酷いよなあ!でも許そう!休暇がそこにあるのならば!
おはよう。元気だったかい。俺は元気だったよ。もう休暇明けたけど。何があったかというと、よしコンビニでジャン○買おうとか、映画館行こうとか言ってもそもそも周りに何あるか全然知らないし、外歩いても知らん店ばっかだし、とりあえず以前槍司に連れて行ってもらったファミレスで一人作戦会議することにして、というのもそういう時に限って槍司もマシルもミシルもどっか行ってしまってたからだが、とりあえずウーロン茶頼んだんだけど、秘められし烏龍の呪縛が発動したのか気付いたら包帯ぐるぐる巻きミイラみたいになってベッドに寝かされていた。
「動かないでくださいよ、ヒヒ」
この怪しげな声さながら見るからにヤバそうな医者が隣にいる。瞼が腫れて前歯は欠け長髪はこんがらがり白衣は緑と赤のシミだらけで傍の試験管に謎の緑色の液体そしてそこから出る紫色のガス。わりぃ、おれ死んだ。
「そぅいやあナー前も言ってませんでしたぁっけ、私の名前はムシル」
「いやさっき聞きましたよ」
「そしてこちらぁが助手の......」
「どうせメシルでしょ」
「いぇいぇ彼のナー前はムシル
「どういう名前の付け方だよ」
「ええ、ムスゥィィゥウ・トゥゥゥ、です」
「やかましい」
まあ冗談はここまでにして、休暇というのは、今までの怪我をこの怪しいヤブ医者に物理的に直してもらえということだった。ちなみに、気絶させられて3日間寝てたというのは事実だ。そしてヤブ医者と言ったのは包帯がどうしてかずっと怪我人に関節極めっぱなしだからだ。
「治療はクゥれで終わりですヨ。チーなみにこぅの場所は政府のトーップシークレッツなのでねっ、もうぅ一度気絶してもらいますよぉぉヒヒヒ」
このヤブ医者がぁがぁがぁぁぁドサッ。YOU LOSE . GAME OVER......
男は目覚めた。体はなんか直った。辺りを見回すとキャンプ場のログハウスっぽい知らない家で、俺はゴッツゴツの木製ベットの上にいた。薪の暖炉があるのだが火はついていない。そして寒い。例えば背後に幽霊でもいるような......
振り返ると知らないグラサン顎髭の男がいた。
「ウウォアアアアア(°O°)」
「おう、起きたか」
「ウオオ見りゃわかんだろ上体起こしてんだからぁ、つか酒臭っ」
「おうそう怒るな、ビールでもどうだ」
「俺未成年だし顔に押し付けるのやめろ冷たタタタタ」
「ははっこいつ面白えなぁ槍司?」
ちょうど槍司が部屋に入ってきたところだった。
「遊びで来てるわけじゃないんですから、ほどほどにしてくださいよ」槍司がため息混じりに言うと、酔っ払いグラサンの注意が槍司に行き、俺は無事エスケープを果たした。
「まずこの人を紹介しなきゃな」槍司はグラサンにチョップを入れて黙らせた。
「この人は保安庁対亡霊部所属特殊部隊2番隊の・・・」
「クソジジイィィィィィイ‼︎」
ズガァァァン。
突如天井を突き破ってアリスが降って来た。いや家崩れるて。この人と一緒にいたら家すら1週間ももたないのでは。
そしてバトルが始まった。さあ早速アリスが紫電で近づいて(え、そんな本格的にバトんの?)大剣一撃!しかしグラサンこれはガードしている!アリス側がじりじりと押して、おっと紫電で裏に回って蹴りがクリーンヒット、これは上手い!さあグラサン距離をとるがアリスがもう寄っている!そして屈んで・・・な、空間にヒビが、え、アリスが地面に押さえつけられるような格好、グラサンは手を触れていないが、アリスが宙に持ち上がって吹き飛ブエエエッ!・・・ッ、実況者と共にダウーン!一体何が起こったのか!?
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