第12話 分岐点
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さあ命がけのゲームしようか
悪意煮えきったここは地獄だ
足が折れても走れ
譲れない意志抱えてるなら
屍踏んで進め
決意はとうに済ませただろう?
身は朽ちても魂は残るさ
俺達まだサバイバー
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「起きろ」
「...Zzz」
「早く起きろこら」
「...Zzz」
「起きろこの野郎っ!日付変わってんだよ!」
バキッ!
「ウッ!だか甘い...正義のヒーローエルボーアタック!...zzz」
ボキッ!ドカッ!
「尺もったいないからさっさと起きろや」
「はい」
いつの間に寝てたみたいだ。はしゃいで走ったり蹴られたりしたせいか体が重かったんだった。今は回復してるみたいだけど。そんで起きて早々槍司に肋骨折られたわけだ。
「...あっ!そうだお前はめやがったな!」
「何の話だ」
「あの女がドSなの知ってて俺を餌にしたんだろが!」
「...なんだ案外見込みありそうだな」
「どういう意味だよ」
「悪いな。順を追って話そうか。とりあえず起きろ」
どう見ても悪いって顔じゃないんだがなあ...。
俺は床に大の字になってた体を起こした。槍司は昨日の戦闘服ではなく、黒い無地のシャツの上に、胸の辺りにアステロイドの紋章が付けられた青のスーツ、下は膝のガードが付いた黒のスラックスという格好だ。つまりは正装。こうやって見てみるとこいつやっぱり背高いな。声と肌の感じでは年はそんなに離れてないかな。
それにしても壁も床も家具も、アリスがいた部屋とは大違いにボロボロだ。壁は茶けてツギハギ凸凹だらけ。床は今もパリパリ言ってる。家具なんかほとんど原型を留めてない。理由は察した。隅っこになんか奴隷みたいな人いるし。煙が入った水晶みたいなのをひたすら数珠繋ぎしてる。
俺たちはとりあえずこの部屋で唯一使い物になりそうな、脚が一本欠けたソファに腰掛けた。ドア一枚隔てただけなのに六本木ヒルズと田舎の事故物件くらい差がある。行ったことねえけど。全くなんでこっちの住民はこうも暴力的なのかねえ。
俺がまだぼんやりしていると槍司が咳払いして話し始めた。
「まず言わなければならないのは、お前はこれから命がけの仕事をするって事だ。」
槍司がポケットからくしゃくしゃの名簿のようなものをテーブルに出した。
「向こうの世界の人間がレイに連れられて俺らの隊に入れられるってのは、今までもあった事だ。そこに名前が載ってるだろう。」
確かに、霊世の住人の名前は俺らとは少し違ってるらしい。
隊長: Alice Seiren (アリス・セイレーン)・清十南
副隊長: 槍司・甲一南
隊員: 浅田 誠也・異三南
隊員: 楢木 明輔・異七東
・・・
基本的に全部日本語表記。てかほとんど日本と一緒だな。しかし最後の3文字だけよく分からん。さっき隊長に挨拶に行った時を思い出せば、呼び名には使わない習慣なんだろう。南ってあるけど地域名にしては情報少ない気がする。異ってのは向こうから来たってことだよな。ん?あと槍司の苗字は?とにかく、日本人の名前があることはわかる。のべ十一人。
「そいつらは全員死んだ。家族を生き返らせるとか、国に復讐するとか、レイが選ぶだけあって大層な志持ってたやつらだったが、全員入隊して1週間しないうちに殺された。」
槍司は淡々と、原稿を読み上げるように言った。しかし握った右の拳には力が入っている。
「言っとくが、これは義務じゃない。こっちの世界に紛れて暮らしていくことも可能だ。前例はないが。」
槍司は少し沈黙して、俺を見定めるように見た。あるいは威圧。そんなに睨んだところで答えは決まったようなもんだが。しかし、その決定が後戻り出来ない事態を齎す予感がする。
槍司はフンと鼻を鳴らしてから話を続けた。
「これから訓練に向かう。そこで気分が変わったならいつでも辞めていい。負い目を感じる必要もないし、霊世についての知識も最低限は教えてやる。」
槍司は席を立ち、ついてくるように目線で促した。
「待て、俺は腹が減り申している。先程の戦闘で肋骨が折れた模様、それに寒い」
「チッ。いいから来い。」
槍司は見るからにイラついた顔をしながらほぼ全壊のドアを蹴り飛ばし(なのにはずれて飛んだりしないんだな)、こちらを見向きせず早足で歩いて行った。待てって、追いつけねえってマジで。
こんなに冷たくされてる俺だが、こんなもんは慣れっこだ。それより槍司が冷たくする理由が大事だ。単なる新人いびりとか、嫉妬とか(いや何にだ)じゃないと思う。印を見せた時の槍司の反応に違和感を感じたからだ。印のことは隊長らに知らされてない、反応を見た限りではだが。レイとこいつらとの関係も気になるし。こいつは何か知ってる。
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