第10話 <ヒマワリ>
俺の名は夜飛。俺は今、天井裏で息を殺し、極秘任務を遂行している。
「静粛に!」
大部屋に入ってきた一人の若い男の声で参列する全員が会話を止め、沈黙を固く守る。参列者は正座しながら男が話し出すのをじっと待っているが、意識は自分に失態がないことを確かめるのに精一杯になっているようだ。当主は何かの理由につけ部下を文字通り切り捨てかねない人であり、更に今その人がここにいるということ自体非常事態だからだ。
ここは<ヒマワリ>の本拠地だ。都市の外れに一際目立ち、江戸時代の武士の屋敷を思わせるここにこそ、奴らの弱点がある!だが、参列者の前に当主:
俺は霊国政府所属のスパイだ。今一度<ヒマワリ>の内情を整理しよう。この巨大な犯罪組織は、16人の幹部及び24人の副幹部が各所に散らばるナワバリを統括し、そいつらを指揮するのが龍八だ。龍八も残虐の限りを尽くした怪人として知られているが、最も恐るべきは妹のヒマワリ、こいつは指揮系統にこそ関わっていないが、戦力で言えば霊国政府の全軍に匹敵する化け物だ。今も見た目は着物姿で目を閉じ、慎ましく正座する美しい少女だが、その目が開いた瞬間、目の前の人が焼け死んだのを俺は目撃した...何を考えているのかすらわからないが、この兄弟の動きには常に注視していなくてはならない!
参列者の中にも一人、霊国政府からのスパイがいる。そいつは、<ヒマワリ>の幹部を殺害したのち、霊力によって被害者の外見、仕草、所有物、更に記憶までもコピーし、また協力者により死体や血痕も完全に消し去ることによって、<ヒマワリ>の一員に成りすますことに成功していた。こいつらの能力は完璧だ。しかし龍八がヒマワリを連れ、幹部達を呼び寄せたこの状況が、密偵の存在に感付いていることを俺たちに示しているんだとしたら!<ヒマワリ>に潜入することが決まった時、いや政府の犬になると決心した時、俺達の心臓は霊国政府に献上したつもりだが、せめて龍八だけでも
龍八が仁王立ちで参列者を見下しながら、威圧的に喋り始めた。
「今日はお集まり頂きありがとう、早速だが、今ここに政府の犬がいるらしい!」
やはりここまでか、何とか龍八とヒマワリを離れさせてくれ、俺が今ここで龍八を仕留めてみせる!
次の瞬間、俺は大部屋の床に転がっていた。天井裏が崩れたのだ!まさか、バレてたのは俺の方だったのか⁉︎
「お前はどこの所属だ?」
一応この時のための答えは用意してある。
「羅生門の阿鬼羅さんのとこの者です、副幹部に悪戯をされてあそこに閉じ込められておりました!」
「そうかあ!あと〜、お前は?」
龍八の目線がもう一人の仲間に向く。何故バレている⁉︎ 変わったことは無かったはずだ‼︎
「同じく羅生門の副幹部の阿外刃です、悪戯をしたのは私ではありません!」
ん、こいつ仲間売りやがった?いや、いや、今考えるべきは一人でも生き残る方法だ!
「うん、よくわかった。お前ら嘘ついてるね」
「いや、そんなことは」
龍八はもう一人の仲間の胸ぐらを掴み、俺の方へ投げ飛ばした。駄目だ、疑いは一切揺らいでいない!
「いいよ、何が正しいかは俺が決める。俺は今からお前らを殺してみて、嘘つきかどうか確かめる」
このまま死ねるか、道連れにしてやるよ!ぬ、体が動かない、鋼鉄のプレートの型にはめられたみたいだ、ヒマワリが目を開いてこっちを見ている、化け物め!
くそ、夜飛一生の不覚...ああ...死ぬ...‼︎ 畜生...‼︎
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「ヒマワリ」は人物名、「<ヒマワリ>」は組織名を表す。前回の「ヒマワリ」の表記を「<ヒマワリ>」に改めました。
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