第5話 幽霊

 幽霊と名乗る少年は、前髪をかき分けると端正な顔立ちが見えた。肌は透き通るように白く、瞳の色は黄色と言ったが、けばけばしい色ではなく、理科の教科書やゲームでしか見たことないような、水晶石の輝きを思わせる美しい色だった。声は少し高いがとても落ち着いていて、自然と僕の苛立ちも収まる感じがした。

 その落ち着いた声であまりに突飛なことを言うので、一瞬硬直して次にそれを紛らすために周りに視線をやると、いつの間にか辺りが一変しているのに気づいた。僕らと机と席だけが真っ白な空間に取り残されていた。

「僕がふつうの人間じゃないってことがわかってもらえたかな。」幽霊は語りかけるように言った。

「幽霊って、、どう〜ゆうこと、なんですかね?」僕は自然とカタコトな敬語になっていた。幽霊とやらにこの訳の分からない空間に閉じ込められたと思ってたら手が震えだした。幽霊はそれを始終優しい表情で見ながら、また語りかけるように言った。

「そのまんまの意味だよ。幽霊という言葉の意味はよく知っているよね、それがそのまんま僕さ。」

僕の頭は恐怖と理解不能で落ち着かずに可笑しくばらばら散らばってる今。意図せず早口にナリ。

「あ、そういえば僕も幽霊なんですよ、もう2年も部活行ってないからね。」


沈黙。


「ねっ、幽霊くん」

「幽霊くんじゃ呼びにくいね。レイと呼んでくれ。」幽霊が少し笑顔になった。

「それが名前なんですかね?」

いちいち疑問調で我ながら面倒臭い喋り方だと思う。

「名前は無いんだ、幽霊は喋らなくても意思疎通できるから。僕みたいにいまだに喋れる方が珍しいんだ。」

いまだに?

うっかり口に出してしまって探っているのがばれないように気を付けた。そうしたら自然に黙り込んでしまった。

幽霊はさっきよりきっぱりした口調で、

「僕は、君を救ってあげられるよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る