【 芽生えた思い 】

「私、信じてるよ。ボクちゃんが、あの壷を割ったんじゃないっていうことを」


 かず姉のやさしい声の響きを体から感じる。


 いつだっただろう……。

 そう、丁度、1年前にも、ここでかず姉と雨宿りをしたんだ。


 あの時も震える僕を、かず姉はやさしく抱き寄せ、温めてくれた。


 あの時、初めて気付いたんだ。

 僕が、かず姉のことを好きだっていうことに……。


「かず姉、僕……」

「うん、大丈夫。大丈夫だから……」


 かず姉は、1年前と同じように、僕を強く抱きしめてくれた。


「皆、探してるよ。ボクちゃんのこと」


 かず姉は、僕の顔を覗き込む。

 僕もようやく、かず姉の顔を涙目で見た。


 かず姉は、やさしい顔で笑って僕を見ている。

 その瞳も、どこか僅かな光に揺れていた。


「うふふっ、いっぱい泣いたねぇ~。ボクちゃん」


 そう笑うかず姉の右手が、僕の頬に流れていた涙をやさしく拭った。


 すると、かず姉が魔法をかけたかのように、夜空から降ってきていた雨がピタリと止んだんだ……。



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