【 かず姉と一緒の部屋 】

 6畳ほどの広さの部屋には、勉強机とベッドが置かれ、畳にもう一組布団が敷かれている。

 机の周りは、可愛らしい小物がいくつか置かれ、ベッドの布団もかわいらしいピンクの花柄模様。


 それを見て、なぜか僕はちょっとドキドキした。


「ボクちゃん、今日、ベッドで寝る?」

「あっ、そんなのいいよ。僕、下の布団で寝るから」


「そんな遠慮しなくてもいいんだよ。それとも、昔みたいにベッドで一緒に寝る?」

「えっ? ぼ、僕、もう5年生だし……」


「遠慮しなくていいんだぞ。この~」


 かず姉は、ニヤリと変な笑いをしながら、ひじで僕をツンツンする。

 小学生の僕を完全にからかっているようだ。


「じゃあ、私、先にお風呂へ入ってくるね。その辺、適当に座ってて」

「う、うん……」


 そう言うとかず姉は、部屋を出て行こうとした。

 スーッとふすまを開けると、何か思い出したかのように、こちらをまた振り返る。


「あっ、そうだ。昔みたいにまた一緒にお風呂でも入る?」


 栗色のかず姉のショートヘアーが揺れた。


 僕の小さな心臓は、激しくブレークダンスでもしているようだった。



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