【 かず姉の部屋 】

 それから、金色の立派な仏壇ぶつだんの前で、お祖父ちゃんに皆で手を合わせた。

 線香をあげ、おりんを鳴らし、お祖父ちゃんの写真を見ると、少し笑っているように感じた。



 ――その日の夜、外はあいにく土砂降りの雨。

 昼中はあんなに晴天だったのに。


 お父さんとお母さんは楽しみにしていたアレを見れなかったと残念がっている。

 当然、僕もそうだ。


「明日もう一日あるから、楽しみは明日に取っておこう」

「うん」


 かず姉の家に泊まりに来る時は、いつも僕だけ、かず姉の部屋で一緒に寝る。

 それは、僕が物心ついてからずっとそうしていたからだ。


 大人は大人同士。

 子供は子供同士ということらしい。


 昔はよく、かず姉と枕投げをしたりして無邪気むじゃきに遊んだ。

 でも、今はもうそんな子供染みたことはしない。

 僕ももう、5年生だから。


 1年ぶりのかず姉の部屋。


 入った途端、ふわりと何かいい香りがする。

 部屋の中は、去年よりも綺麗に片付いているよう。

 部屋の小物は、一段とピンク色が目立ち、まさに女の子の部屋へと変わっていた。


 そのかず姉の部屋の香りと映像が、僕の11歳の脳内に鮮明にインプットされ、一番奥の引き出しの中に、甘い記憶として残された。



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