第4話 学園一の優等生
今回双葉メインです。
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双葉は降魔が出て行った所を何度かチラ見をしながら朝倉の前まで向かう。
なぜチラ見をしていたかと言うと———
(さっき出ていったマナ操作のうまい彼は、八条降魔といったかしら? もういなくなったのかしら? 彼、絶対に召喚魔術が好きだと思ったから、私の召喚魔術を見たいと思ってくれていると思ったのだけれど)
しかし結局双葉が準備をし終わっても降魔が現れる様子はなかった。
双葉は取り敢えず目の前のことに集中しようと、意識を魔術に傾ける。
「朝倉先生、準備できました」
「分かった。それでは開始してくれ」
「《我、契約を願う者。我が召喚に応え給え———》【
そう唱えた瞬間、『ピカッ!!』と眩く魔術式が光り出す。
降魔は5分、結希斗は30秒だったのに対し、双葉は数秒。
しかもマナの量は結希斗とは比べ物にならないほど膨大だ。
長年教師をしている朝倉でさえポカンとしてしまうほどの出来事だった。
なので他の生徒たちも朝倉同様ポカンとしている。
しかしそんなことなど全く見向きもせずに双葉は魔術を実行し続ける。
一向に収まらない光。
そして感知しようとしなくてもわかる膨大なマナ量。
その量は一般的なプロの召喚術士でも掌握しきれないほどだった。
だが双葉はその膨大なマナを操作し魔術式に全て流しきる。
すると辺りが完全に見えなくなるほどの輝きが魔術式から発生し、双葉を含めた全ての人間が目を閉じる。
やがてゆっくりと光が落ち着いてくると、今度は目を開けた人間が次々と固まって動かなくなる。
それには理由があった。
双葉の召喚魔術によって召喚されたそれは、先程結希斗が召喚したドラゴンの5倍ほどの大きさのドラゴンだったのだ。
真っ黒な巨体に、その巨体を支える太い4本の足に大きな翼。
そのドラゴンの周りには禍々しくもあり神々しくもある可視化されたマナが発生しており、そのマナに触れた建物や草木が消滅している。
それに気付いた朝倉は慌てて『等級測定器』という、召喚獣やモンスターの強度を測る魔道具を取り出し、ドラゴンを測る。
そしてその結果を見て目が飛び出そうになるほど驚く。
なぜなら等級測定器には、
__________
名前:???
種族:龍種?
等級:《超級》
__________
と表示されていたからだ。
この世界に超級の召喚獣を呼び出せる術者は物凄い少なく、それこそその数は100にも満たない。
朝倉も一度も超級召喚獣を見たことがなく、一瞬動きが止まっていたが直ぐに生徒たちに声をかける。
「お前たち! ここは危険だ、下がっているんだ! この召喚獣の等級は『超級』だ!」
生徒たちは初めて見る『超級』に興味津々だったが、建物が消滅しているのを見ていたこともあり、すんなり離れていく。
今第1練習場の真ん中には謎のドラゴンと双葉しかおらず、朝倉や他の教師も生徒達とともに下がっていた。
するとドラゴンの方から口を開く。
『我を呼んだのはそなたか?』
ドラゴンが双葉に聞く。
その声には威厳がこもっており、その声を聞いただけで生徒だけでなく朝倉までもが気が付けば跪いていた。
しかし双葉はどこ吹く風のように立ったまま、ドラゴンを鋭い眼光で見据えている。
「そうよ、私があなたを呼んだの。私の名前は龍川双葉。私は貴方と契約を結ぶために呼び出したの。だから契約してくれないかしら?」
双葉はドラゴンに遜るのではなく逆に尊大な態度で言葉を返す。
その時生徒と教師が、
(((((((その態度やめて!? 私達(俺達)まで巻き込まれたらどうするの!?)))))))
と思ってしまったのは仕方のないことだろう。
それほどまでにドラゴンの威圧が凄まじいのだ。
Sクラスの生徒でさえ苦笑いをして冷や汗をかいているほどなのに、それよりも下のクラスの生徒達が耐えられるはずもない。
しかしドラゴンは特に怒った様子はなく、皆んなが安堵の息を吐く。
『そなたは我の力を使いたいと申しているのか?』
「ええそう言っているつもりなのだけど。だから契約してくれないかしら?」
ドラゴンの問いに再度契約を申し出る双葉。
するとドラゴンはだんまりしてしまった。
その時間は僅か数十秒だったが、双葉以外の者には何時間にも感じられた。
ドラゴンが口を開く。
『……よかろう。そなた――双葉と契約をするとしよう』
その言葉に生徒達から歓声がわく。
教師たちも必死に何かを書いている。
きっとこの後他の教師たちとこの情報を共有するためだろう。
「契約を受け入れてくれてとても嬉しいわ。それじゃあ契約しましょうか」
『うむ』
双葉が契約の魔術式を発動させるための言葉を紡ぐ。
「《我、契約を望む者。名は龍川双葉》」
『《我、名をファフニール。契約を承諾しよう》」
魔術式から光が放たれ、無事契約が成立する。
しかし契約が終わった直後、
『……我はもう帰った方が良いかもしれんな』
ドラゴン改めファフニールが辺りを見渡してそう溢す。
ファフニールの言った通り、始めよりは皆んな自然体に戻っているものの、既に何十人もの生徒がファフニールのマナにあてられて気絶したり顔色が悪くなっていた。
それに今更ながらに気付いた双葉は、
「……そうね、本当は貴方の力を見てみたかったのだけれど流石に今は無理ね」
ファフニールと同じく辺りを見渡して同意する。
するとファフニールが一瞬にして跡形もなく消えてしまった。
それを見終えると、双葉は心做しか落ち込んでいるように見えた。
(折角2体目の超級召喚獣と契約できたから、色々したいことがあったのに……それに結局彼も来なかったし……)
双葉は再び降魔の出ていった方を見るがやはり来ていなかった。
双葉は少し残念そうにしながらも群がってきた生徒と教師への対応に追われることとなり、いつの間にか日が暮れていた。
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一方その頃降魔はと言うと……
「誰も来ない……。まぁでもここで誰にも邪魔されずに寝れるからいいか」
1人あれから授業の全く行われない教室で睡眠を貪っていた。
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