第17話
逃げてはダメだ、現実を直視せよ!
インスタントコーヒーのビンを眺めながらこれからどうしようかと悩む。
ビンの中の粉は残り2割をきっている。
買い置きはない。
麦茶パックをやかんに入れ、コンロに火をつける。
昔なつかし昭和の時代を感じさせる苦味のある煮出し麦茶だ。
沸騰したやかんをもっと加熱すれば濃くなるのではないかと弱火にして少し待った後火を止める。
熱々麦茶をカップに注ぐ。
そこに貴重なインスタントコーヒーをいつもに比べるまでもなく少量をスプーンにとり、麦茶に入れかきまぜる。
『どうだ? いけるのか?』
少し冷ました後、口に含んだコーヒー?からは十分な苦味を感じられる。
ごくりとコーヒー?を嚥下する。
インスタントコーヒーのビンを眺め、振ってみる。
増えるわけもなく、心に寂しさが襲ってくる。
『はぁ、これでいくしかないか』
インスタントコーヒーの粉末90%オフでこれから過ごすことを決意した瞬間だった。
Kcho>みんなどう?
Kcho>間に合いそう?
nemi>むりー、むりぽー
YasuK>一日が40時間ならなんとか
nemi>白いワニが、白いワニがー
Utan>コーヒーを、カフェインをくれー
Kcho>一段落したらまとまった休暇をもらえるよう申請するからがんばって
Utan>・・・
Utan>それってもしかしてそれまで休まず働けってこと?
nemi>かちょー
Kcho>えへっ
ガルガルルー、ウッキー
コーヒーを、コーヒーをくれー
仕事中考えがまとまらず意味不明をことを考えるようになってきたので気分転換にコーヒータイムにすることにした。
台所へ行く途中。
うんうん、彼女たちは大人しくアニメをみているな。
じゃねー!
見た目子供だけど、ほんとは大人なんだろ。
こちとら働いてるというのに、やつらはアニメ見てくっちゃねの自堕落生活。
がつんと言ってやらにゃならんか。
「おまえら、一日中アニメばかりみてないで何かやることないのかよ」
「今いいところなのじゃ、だまっておれ!」
「そうだぞ、静かにしろ!」
ぐぬぬ~
追い出すこともできんし、どうすれば。
え~い、強行手段だ!
別室へ走りルーターの電源を引っこ抜く!
「うわ~、どうしたのじゃ~」
「と、止まってしまったのだ、動け!早く続きを見せるのだ!」
しめしめ、ネットに繋がらなけりゃほぼ役立たずなのよ。
「あ~あ、毎日長時間その機械を使ってるから壊れたかな」
「え~、早く直すのじゃ」
「そうだ、そうだ!」
ノートパソコンの調子を見る振りをして彼女たちが目を離した隙にささっとペアレンタルコントロールで一日の使用時間を5時間に設定する。
今まで毎日10時間以上平気でアニメを見てたからな。
今後のことを考えてモデムやルーターのことを知られたくなかったので、トイレに行くふりをして電源を入れ戻ってくるとメルモがにぱっと微笑んで話しかけてきた。
「こーしーじゃろ、こーしーが飲みたくていらいらしておるのじゃろ」
「うむ、このアニメとやらは知識の宝庫だ! 我が素晴らしい知識を授けてやろう」
は?
こいつらなにいってんだ?
「たんぽぽコーヒーよ! コーヒーの代わりになるそうな」
「アニメでやっておったのじゃ。そこの庭にも生えておろう」
ほうほう、たんぽぽコーヒーか名前だけは聞いたことがある。
それでも……
「それは置いておいてだ。一応そのノートパソコンは修理したが、一日5時間以上は使えなくなってしまった。残念だがしょうがないよね」
「ぐぬぬ~」
「メルモや、しょうがない。暇になった時間で魔法の修行でもしようではないか。あらたな知識もたくさん得たことだし、いまなら新しい魔法も開発できるやも知れぬ」
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