第16話
しばらくは平穏な日々が続いた。
朝起きて飯食って、洗濯して、深夜まで仕事してといつもの日常というやつだ。
あえて言うなら、野菜が足りん。
肉は冷凍庫にたんまりあるが、栄養偏るだろ。
メルモは今日は魔法の研究をするのじゃとかいって朝からスレ○ヤーズの続きを見ている。
この前までは少し気分転換じゃとかいって爆裂魔法好きの女の子にダメだししながら別のアニメを見ていた。
どちらにしろ大人しくしてくれればそれでいい。
ドガーーーーン!
静かに仕事させてくれっていうささやかな望みさえなかなか叶えられない。
廊下を走るメルモの足音を聞きながら、カーテンを開け外を見る。
再び大きな爆音がし、光が弾けたように一瞬辺りが明るくなる。
1,外に出て調べる
2.布団を被って何も見なかったことにする
3.仕事を続ける
→3.仕事を続ける
当然仕事を続けるだ。
納期が目前だしやるしかないっしょ。
そう思ったが、ドタドタドタっていうメルモの廊下を走る音が戻ってきたと思ったら、手を引っ張られ外に行く羽目になった。
車庫側の門の外には女性が立っている。
燃えるようなという言葉がぴったりな赤毛のグラマラスな女性だ。
黒いボンテージファッションに身を包み、もうほんとボンッ、キュッ、ボンって言葉がこれほど素晴らしく当てはまる人は見たことがないってほどだ。
そして彼女の少し後ろにこの前見た三人組もいる。
師匠を呼んでくれ、師匠なら何とかしてくれるはず。
そんなメルモの願いで臨時チームを組んでた3人が師匠を連れてやってきた。
「なんだ、メルモはこんな結界で苦労しているのか。結界透過!」
右手を伸ばし、結界に触れる……触れ、触れると思われた右手は結界をすり抜ける。
ついで肩、頭と抜けこちらへ歩み寄ってくる。
歩みが止まった。
「いてててて」
女が急に痛みを訴える。
「これ以上は行けぬ。引っ張ってくれ」
ミリンたちが駆け寄って引っ張るよりも早くメルモがこちらに引っ張り込んだ。
ポン
彼女はもやに包まれる。
もやの向こう。つまり結界の外にバサっという音と共に衣服がバラかまれる。
もやが晴れたと思ったら、急に光が差し込んでくる。
まぶしい!
頬に痛みが走る!
メルモのとび蹴りを受け吹っ飛ばされる。
蹴りをいれたメルモは干してある洗濯物を引っつかみ戻ってきた。
彼女の方へ視線を戻そうとしたらメルモがこちらの首を引っつかみあらぬ方をむかせる。
ちらっと見えた人影は太陽の光でよく見えなかったが、その人影に向かってメルモはバスタオルをかける。
頬と首をさすりながらあらためて彼女を見る。
………………
彼女を見る
…………
彼女
…
少女!?
バスタオルを体に巻きつけ涙目の少女がうずくまっている。
10歳前後に見える女の子がそこにはいた。
耳は笹かまぼこのように尖っており、将来の美人が確定しているといってもいいほど整った容姿をしている。
「師匠? 師匠ですよね」
「そうだ! おまえの師匠のネミアだ」
「して、そのお姿は?」
「グラマラスビューティネミアとは仮の姿、若い容姿のこの姿だと侮られる恐れがあるので、魔法で大人に変身しておったのよ。それがこの空間では魔力がうまく練ることができず魔法が解けてしまったのだ」
また幼女、いや少女か。
どちらにしても勘弁してくれ。
あれ? そういえばこの子の言ってる内容が理解できる。
どういうことだ?
「えーと、あのー、我が家へようこそ。自分は太郎っていいます。君も自己紹介してくれると嬉しいな。それとどうして君の言葉が理解できるのかも教えて欲しいかな」
「うむ、我が名はネミア。こやつの師匠をしておる。言葉が通じるのは思念通の魔法をかけたからだな」
「えっ、そんな魔法使ってるの見てないけど……」
「わしくらいになると無詠唱でちょちょいのちょいだ」
「で師匠、この結界を出るか破壊をお願いするのじゃ」
「無理に決まっておるだろ、魔法を発動するための杖も魔道具もほれ、あの結界の向こうに転がっておる」
「し、ししょー!!!」
「それより自分は仕事戻っていいかな。話がまとまったら後で教えてくれればいいから」
あくびをしながら家へと戻る。
テレワークで残業がはかどる。
昔は会社に泊まりこんで仕事をすることも多かったが、コンプライアンスがどのうのとかいって泊まりでの徹夜作業はなくなった。
でもしかし人員増やしてくれるわけでもなし、作業量が減るわけでもなし無茶な納期は前と変わらず。
それがコロナでテレワークとなり、自宅で残業させられまくり。
残業代がきちんとつくのはありがたいが、これって法律的にどうなのって思わないでもない。
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