第12話

 メルモの前に見慣れぬ3人がいる。

 2人はメルモと話をしているようで、ひとりは先日の恐竜、なんだっけギガントランドドラゴンだっけ、のそばにしゃがみ込みなにやらやっている。


「おー、タロウ。こやつらはわらわの知り合いじゃ。わらわが戻らぬのでギガントランドドラゴンの依頼を新しく受け、ついでにわらわがどうなったかの確認に来たのじゃ」


 近づくとメルモは嬉しそうなちょっと悔しそうな複雑な顔をしながら説明してくれた。

 自分にはわからない言葉で彼女らが話をしているのを黙って見守る。

 あちらの彼女は、ーそう話をしている二人は女の子。向こうで何かやってるのは男の子だ。


 話を一旦中止し、女の子は杖を掲げなにやら唱えだす。

 杖はだんだんと光を強くし、ひときわ光ったと思ったら光は消え、杖は力なく下ろされた。


「むう、無理か」

「ん、どうしたんだ?」

「いや、なに、ミリンにも結界越しに思念通の魔法をかけてもらおうと思ったのじゃが、結界を越えることは叶わなんだ」


 眼前の女の子はしょぼんとしている。


「それはそうと、とりあえず彼女たちを紹介してくれないかな」


 まずはこちらの紹介をしてくれてるのかタローという言葉が聞こえた。

 次いであちらの紹介を自分にも分かる言葉でおこなってくれた。


 彼女らはBランクの冒険者チームで、魔法を使ったのがメルモの近所に住んでいたおねえちゃんでエルフのミリン、隣はハーフリングのモニュ。ふたりとも中学生くらいの女の子に見えるが、エルフのミリンはメルモより年上で、ハーフリングのモニュも小柄な女の子に見えるがとっくに成人しているとのことだ。

 そして向こうにいるのはハーフリングのチッパ。

 モニュの弟で依頼のギガントランドドラゴンの牙の回収やお金になる皮や肉の剥ぎ取り解体をおこなっているのだそうだ。



 ミリンが見えない壁ー結界ーを触ったり叩いたりはじめると、モニュも短剣を取り出しカツカツとつついたりしている。

 チッパは解体の手を止め、こちらに歩き寄ってきた。

 なにやら声をかけられたモニュが腰につけている袋を外し手渡そうとしたところで、チッパは躓き結界にベチャっと頬からぶつかった。


 メルモも含め女の子3人が笑い出すが、自分は持っていた洗濯物で頬に付いた血をぬぐってしまい、洗濯したばかりなのに汚れた洗濯物に少し落ち込んだ。

 そんな様を見て女の子たちはいっそう笑い出したが、ミリンがまじめな顔になってなにやら話し出す。



「どうしたんだ?」


 分からない言葉で話しているメルモに問いかける。

 チッパは解体で手にべっとりとついた血を手を振ることによりこちらに飛ばしてきたかと思うと、ギガントランドドラゴンのとこまで走り出し血の滴る真っ赤な肉をつかんで戻ってきた。


 とっさにかばった洗濯物に血の点々がついてちょっとムカッときた。

 なにやってくれてんのさ。


 チッパは肉を持ったままこちらに手を伸ばし、見えない壁に遮られる。

 ぶつかった拍子に取り落とした肉はボトッと落ちるが壁のこちらがわに転がってきた。


 メルモが指差し、ミリンが向こうに転がっているものを拾う。

 そして振りかぶり、こちらに投げる!


 カランカランという乾いた音と、バサッという音がした。

 メルモが転移してきた際に弾かれ落としていた杖と服とを拾ったミリンがこちらに投げ渡そうとしたのだが、肉のようにこちらがわに来ることはできず、うまくいかなかった。



 言葉もよく分からんし、自分はもう離れてもいいかなと考えここを後にする。

 血で汚れた洗濯物を早く洗わなきゃならんのよ。

 それにそろそろ仕事の時間だ。

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