第9話

「いけー、やれー、がんばれー! そこだー!」


 アニメを見ながら応援する声が煩いがそんなことをいってられない。

 プロジェクトチームのメンバーのせっつく音が耳にこだまする(被害妄想)

 集中してきて女の子の声も耳に入ってこなくなっていたが、部屋が暗くなってきたことには気付いた。


「あ~、もうこんな時間か」


 時計は午後7時を指しており、敷地外は木々に覆われているため暗くなってきていた。

 首を捻りコキコキとコリをほぐす。


 集中が解けると声が再び耳に入ってくる。


「うぉー、負けるなー! キャー!」


 ずっと見続けてるのか凄いな。

 今日この後仕事を続けるかは未定だが、とりあえず席を立つ。

 腹減った……



 メルモちゃんを連れて台所へと移動する。

『まだ見るのじゃー』という彼女をノートPCからひっぺがすのはちょっと大変だった。

 そしてつけた電灯には昼になったようじゃーと興奮していた。


 夕飯は白いご飯に野菜炒め(野菜蒸し?)。

 たくさんのもやしにちょびっとのキャベツや人参が入ったカット野菜と豚こまを耐熱タッパーに入れ、日本酒とだしの素だけを味付けに加えレンジでチンしただけの手抜き料理だ。

 それにお湯を入れるだけのインスタント味噌汁ね。


 手抜き料理にもかかわらずメルモちゃんは『こんなうまい料理は食ったことがない。御主は料理人か?料理の天才じゃ』とかいって大喜びだった。

 そんな可愛い子に買い置きのプリンをデザートに出したらひと口口に入れてあまりの美味さに呆けてしまった。

 残念ながらもうないのだよ、それで終わりなのだ。残りをよく味わって食べるがよい。



 食事の後はお風呂だ。

 浴槽にお湯が溜まるのを待つ間、メルモの話に付き合わされていた。


『黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの……ドラグなんちゃら』ってポーズをとってノリノリで唱えているのを生暖かく見守っていてあげた。

 あんたその魔法は使えんかもしれんが、他の魔法は使えるれっきとした魔法使いだろという言葉は飲み込んだまま。


「わらわもリナのような凄い魔法使いになる!!!」

「あ~、はいはい。あれは架空のおはなしだからね。リナもいないし、ドラグなんちゃらって魔法もない」


 言った後、しまった!子供の夢を壊すようなことを。って一瞬思ったが見た目あれだが、子供じゃなく成人もしてるんだよな。


「架空のおはなしやもしれぬが、ドラグス○イブをわらわは開発してみせる!やってできぬことはない!」


 熱く語り始める前に風呂の使い方を教え、風呂に入らせた。

 もちろん一緒に入りはしないぞ。

 親戚の子だったとしても一緒に入るのはまずい。




 そんなこんなで二日目は過ぎていったが、メルモを寝かしつけた後夜中までWEBカメラをオフの仕事時間外で流用できそうなサンプルコードを漁っていた。


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