部活動始めさせられました。
突然だが、俺は部活動に強制参加させられた。
カンナと恋人同士になったと言う事に実感が湧かないまま、数日が過ぎてしまった。
両想いだと分かる前は何処へ行ってもベタベタくっついてきたカンナだったが、いざ付き合ってみると、全くと言っていいほどくっついて来ない。
飽きられたのだろうか。
それどころか、避けられてる様な気がする。
何故なのか。
ちょっと寂しい。
午後の授業が終わった。
授業と言っても、このワープロ学園は未来の冒険者を育成する為の教育機関だ。
その為、日本の学校みたいな授業では無く、冒険者として生き抜く為の知識、武具を使って放つ戦技、魔法の扱い方等、日本で生きていたら絶対に受ける事が無い授業ばかりなのだ。
お世辞にも頭が良いとは言えないし、勉強が死ぬ程苦手だった俺でも、この世界で受ける授業はどれも新鮮で、自ら進んで学ぶ意欲すらも出ている程だ。
楽し過ぎる。
だが、まだ何かが足りないんだ。
俺が求めていた学園生活は、授業を楽しむ事では無い。
いや、彼女が出来ただけでも大きな進歩と言えるけども!
「部活動の勧誘じゃコラァ!」
異世界にもヤンキーって居るんだな〜とか思ってたら、何故か俺の事を軽々と担ぎあげ、何処かに連れて行かれた。
「すみません、それ勧誘じゃなくて誘拐って言う犯罪行為なんですけど、知ってます?」
「大人しくしていれば命は取らねぇから安心しろ」
抵抗したら命を取るのかよ……
まぁ異世界と言うものは、常に危険と隣り合わせだ。
銃刀法がある日本がまだ平和なだけであって、他の国に行けば拳銃の所持だって認められている所だってある。
そう言う意味では、異世界も危険度で言えばあまり変わらない。
だからと言う訳では無いが、俺も常に文房具を携帯しているのだ。
文具使いの能力、それは、文房具を自在に操る力。
俺が念じれば、懐に仕込んである文房具のシャープペンシルだって、シャープ・ペイン・シールと言う文暴愚に早変わりだ。
正直言って、手足を拘束された所で大した被害は無い。
何時でも抜け出せる。
抜け出せるのだが、俺はこのシチュエーションに、何故か期待してしまった。
これからどんな事されるんだろう。
「姐御! 連れて来たぜ! コイツで合ってるよな?」
「あ、姐御はやめてって何時も言ってるよね!? それに無理矢理連れて来ちゃダメって、何度も言ってるでしょ!」
ヤンキーが姐御に怒られて落ち込んでいる。
叱られた子犬みたいだ。
「ブンドゥク〜何処~? あれ、サーヤじゃん。ブンドゥクも。どうしたのこんな所で」
相変わらずカンナは俺の事をブンドゥクと呼ぶのをやめない。
カンナ曰く『あたしが考えた呼び方だから、他の人にも呼ばれていると優越感半端ない』だそうだ。
よく分からん。
ん? 今サーヤって言ったか?
姐御って、まさか――
「ご、ごめんねブンドゥク君。弟のサイガがこんな事を……」
サイガって言うのかこのヤンキー。
え? 弟?
「あれ、サーヤって文学部の部長だよね確か。ブンドゥクの勧誘? あたしも入る!」
「あ、ありがとうカンナちゃん! でもブンドゥク君はまだ部員って訳じゃなくて――」
申し訳無さそうに俺の事をチラチラ見てくる眼鏡っ娘。
「あー……カンナが入るんだったら俺も入ろうかな〜なんて」
正直言って納得は出来ないが、カンナも同じ部活動だったら面白そうだしな。
「ブンドゥクのアニキ! アニキに一生ついて行きやす!」
「いや、カンナだって居るのに一生付きまとわれても困るんだけど」
「そ、それってブンドゥクはあたしと、一生一緒に居てくれる……ってコト!?」
もうヤダこの部活。
収集がつかん。
俺はこれから、文学部の一員として学園生活を送る様だ。
その時、部室に入る一人男。
「文学部の部室は、我が武道部が頂くぞ!」
また変なのが来た。
その男は、剣を背負っている。
なるほど、武道部と言うのは戦いに特化した部活動なのか。
「我が名はリヒト! 戦士系最強クラス、ウェポンマスターのリヒトだ!」
ウェポンマスター、戦士系最強クラスか。
何が最強だ。
そんな肩書きだけで、好き放題出来ると思ってるのか?
折角所属した部活動の部室を、奪われる訳にはいかないよな?
「……我が名はクロウ、文学部に所属する期待の新人、文術士系最強クラス、ストーリーテラーのクロウだ!」
今考えた。
正確には文術を扱えるのは俺しか居ない。
だから、別に俺が文術を扱う者で最強クラスを名乗っても問題無いと言う理論だ。
もう後には引けないな。
面白くなって来た!
異世界転生した俺の武器は文暴愚!?~ペンは剣よりも強しってそう言う意味じゃないからな!?~ @sekitun
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