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「この町だけじゃなかったんだ。もう、いろんなところで、たくさんの化けねこが」
(みんな、気をつけて)
おシマさんはそう伝えようとしたのに、間に合わなかった。
「あぶない!」
タマは、机の上から転がり落ちるおシマさんを受け止める。
「落ち込まないで。
タマには、こんな時には連絡する、って約束した人がいるんだ。連絡したら、有給取って来てくれることになっているんだ」
連絡?
「待ってて」
メールを立ち上げる。
そうか。タマは自分のアドレスがあるんだっけ。
「あれ」
「どうしたの?」
「もう、こっちに来てるみたい」
「えっ?」
タマの受信ボックスにあったメール。
「〈
妖怪にくわしい大人の人って、この人のことみたい。
「なんてこった」
〈タマさん。大猫又姫の被害について連絡を受けました。
お恥ずかしいことですがうちの本家の蔵には大猫又姫を封印した壺があったのです。
なのに親戚たちは『そんなのは伝説』と言って信じず、何年かおきにお札を貼りなおすことを忘れていたようです〉
「大人っていい加減だなあ」
ぼくもあきれた。
「〈急ぎ、封印の壺とお札を持って行きます。化けねこのみなさんには申し訳ないことです〉」
ほかにもいろいろ書いてあったので、それを読んでいたら、
「にゃあ!」
眠っていた又吉おじさんが起きて、おびえだした。
「みゃあ! みゃあ!」
おシマさんも。
「タマも、なんだかゾワゾワする」
ぼくまでなんだか落ち着かなくなってきた。
「あっ、みんな!」
見れば子ねこたちがみんな、おびえているのだ。
「大丈夫だよ」
ぼくは、箱の中やひざ掛けの中でふるえている子たちに声をかけたり、抱っこしたりした。
「タマ、これは大丈夫なの?」
「なんだか怖い匂いがするんだけど……でも、人間の匂いもする」
そのとき、玄関のチャイムが鳴った。
「こんばんはー」
男の人の声。
「タマもいっしょに出るよ」
ひとりで行こうとしたぼくの手を、タマがつかんだ。
なんだかふわふわした。
「〈肉球とかけて〉」
玄関先で、おじさん姿のタマは言った。
すると。
「〈梅の花と解きます。そのこころは?〉」
ドアの向こうからなぞかけが返ってきた。
しかしタマは落ち着いて、
「〈ねこにはどちらも似合いのものです〉
こんばんは! 光明寺さん、助かった!」
さっき見てたメールにあった合言葉だ。
なかなか周到にことが進んでいるような気がするよ。
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