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ぼくは、タマが話してくれたことが頭の中をぐるぐる回っていたけれど、それではどうしようもないので少しずつまとめてみた。
「まず、又吉おじさんは化けねこだったんだ」
「うん。そうなんだねえ」
タマはねこの姿に戻っている。
「そしてうちの商店街は、シャッター街っていわれてたこともあるけど最近お店が戻ってにぎやかになった。
と思ったら、新しいお店のだいたいが化けねこのお店だったんだね」
ここの町に限らず、化けねこたちは〈ゲーム〉をしていたのだと、タマは教えてくれた。
「そうか。さみしくなった商店街や貸しビルに、人間のふりで住み着いて、化けねこだらけにした町が勝ち。そういうルールがあったからなんだね」
「町ごとに競っていたんだ。ここの商店街は強豪なんだねえ」
「化けねこだらけにして、どうしようとしていたの?」
「化けねこだらけにして、それだけなんだねえ。
人間たちをあとでびっくりさせたいから、それが面白いから、っていう考えで参加していた化けねこもいるけれどねえ。
ここの商店街は、どうして強豪なのかというと、人間といっしょに人間と同じことができるのが楽しくてやっているねこばっかりだったからなんだねえ」
タマも化けねこになってから、できることが増えて楽しくてたまらないようだけれど、ほかのねこもそうなんだね。
そういえば、アルバイトの人(たぶん人間だと思う)をたくさん雇っているお店もあるなあ。
「でも、疑問があったんだねえ」
タマは言った。
「タマは化けねこになったばかりのとき、不思議だったんだねえ。
どうしてあちこちの町で、こんなことを競っているんだろう、って」
さみしい商店街や、観光地の話はよくニュースで聞くけれど。
だからといって、化けねこがどうしてもそこで人間のふりをしなければいけない理由はない。
「そもそも、誰がそんなことを競おう、なんて言い出したのか、誰もしらないんだねえ」
「みゃあ」
又吉おじさんがミルクを飲み終えて、ちいさくなくと眠ってしまった。くたびれたんだろうな。
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