「タマさんも変わった方ですよ。ずっと何十年も飼いねこをされて、なかなか化けねこになろうとなさらなくて」


 帰り道、タマは又吉にこんなことを言われていた。


「でも、ようやく仲間におなりくだすった。

 かしこいタマさんにはみんな、期待しているんですよ。きっとこの町を、化けねこだらけにしてやりましょうや。我々なら勝てますよ」

「ふむう」


 タマはあいまいな返事をして、ひらり、と、へいに飛び乗り、トトト、トトト、と、帰って行った。


   * *


「おはよう、タマ」


 朝になると、タマは帰っていた。


「おかえり。ごはんだよ」


 集会帰りの朝は、なんだか寝ぼけているのでぼくがタマの好きなねこ缶でごはんを用意する。


「おはようなんだねえ」

「集会は楽しかったの?」

「……そうだねえ。いろんなはなしをしたねえ」

「そうか。

 じゃあ、行ってきます」


 通学のとちゅうで、マチコさんの家の美容室を通りがかったら、町内の人気美容師、シマさんが店の前をそうじしていた。


「あら、おはよう」

「おはようございます」


 マチコさんはダンスクラブの朝練習があるから、この時間はもう学校にいる。それで、いつもシマさんかマチコさんのお母さんと朝のあいさつをしているなあ。


「いってらっしゃい」

「いってきます」


 ぼくは、いい天気だなあ、と、なんとなくいい気分で学校へ向かった。

 今日も、みんないい一日だといいな。

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