「どうしたのかねえ」


 道が、ならんだ化けねこでいっぱいで、広場に出られないらしいのだ。


「タマさん、タマさん。お久しぶりっす」


 白に黒ぶちのある、三本しっぽの又吉またきちがよって来た。


「こんばんはなんだねえ。

 これは、どうしたのかねえ」

「広場には今、大寅吉おおとらきちさんと、グレイさんと、おシマさんがいらしているんですがね。

 もう、お三方だけでこの場所がぎゅうぎゅうづめ、もう子ねこ一匹入れないときて、入りきれないねこがこのとおり行列しているんですよ」


 タマは、聞いたことがある。

 このひみつの場所は妖力の強い化けねこの、その時の調子により様子が左右されることがあると。

 いつもは広々としたこの場所が、三匹だけでいっぱいになっているとは。

 そして、そこから続く待ちぼうけの列も長く、その三匹の今の様子を見ることもできなさそうだ。


「大寅吉さん、グレイさん、おシマさん。

 だれかの気持ちが、ふさいでいるのかなあ」

「そこですぜ」


 この三匹は、この一帯の大物化けねこで、とてもえらい。みんな、しっぽが七本ある。

 ひみつの場所をせまくしてしまうような、そんな出来ごとが、三匹の誰かにふりかかったのだろうか。


「おい、新入り」


 列の先頭あたりから声が飛んできた。

 新入り、というのは、タマのことだ。


「はい」

「ちょいとみんなで表へ出ようぜ。仕切り直しだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る