おかえり。ごはんだよ。

 化けねこになった今でも、タマは時々ねこの集会へ行っているらしい。


「気をつけてね」

「行ってくるね。

 おやすみなさい」


 月の夜に窓からひらり、と飛び降りて、行ってしまう。

 ぼくはねる時間なので、朝まで何が起きているのか、知らないんだけど。


   * *


 満月が道のすみずみまで照らしているような夜。

 タマは、二本のしっぽをゆらゆらさせながら、へいの上をとことこ歩いていく。


「しずかだねえ」


 タマが向かうのは、タバコ屋さんの前に並んでいるジュースの自動はん売機。

 その暗がりに、するり、と入り込む。

 ねこだから。

 入り込むと、人間には通れない道が遠くにのびている。そこをタマは、トトト、と、静かに歩いていく。


 道をぬけると広場に出る。

 集会の夜、そこでは集まった化けねこたちが、思い思いの場所で寝ころんでいるのだった。大きいのも、小さいのも。黒いのも白いのも、灰色も。

 キジトラも、ブチも、そして三毛も。

 月はぽっかりと浮かび辺りを照らしてあかるく、寒くもなく暑くもない。

 ここは化けねこだけの、ひみつの場所。町内の化けねこたちがおだやかであればあるほど、とてもすごしやすい場所になるのである。

 それがふりそそぐ月あかりのしわざなのか、化けねこたちが大ぜい一同に会したための怪異かいいのひとつなのか、まだタマは新入りでわからないのだが、とにかく広場がおだやかであるならば、町内の化けねこたちがみんな幸せだというあかしなのである。


 ところが今夜は。

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